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2022年3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震で、交通インフラなどに多大な被害が出た。東北新幹線では、せん断破壊とみられる損傷で橋脚が軸方向に大きく沈下した。上半分の補強を済ませていたが、損傷した基部は対象外だった。

 気象庁によると、地震のマグニチュードは7.4で、震源の深さは57km。宮城県登米市、蔵王町、福島県相馬市、南相馬市、国見町で震度6強を観測した。西北西―東南東に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートの内部で発生した地震だ。

 インフラでは、鉄道構造物の損傷が目立った。東北新幹線では、電柱や架線、高架橋、駅など合わせて約1000カ所が被災した。

 なかでも、大きな被害を受けたのが、福島県国見町の県道46号白石国見線をまたぐ高架橋の橋脚だ。根元が沈下するように損壊(資料1、2)。運休を余儀なくされた。

資料1■ 橋脚が軸方向に沈下
資料1■ 橋脚が軸方向に沈下
東北新幹線と県道46号白石国見線とが交差する地点で損傷した橋脚。基部にせん断破壊とみられる損傷が生じた(写真:村上 昭浩)
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資料2■ 福島県沖でマグニチュード7.4の地震
資料2■ 福島県沖でマグニチュード7.4の地震
推計震度分布。丸数字は資料番号に対応する。気象庁の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 地震工学に詳しい京都大学の高橋良和教授は、「橋脚が軸方向に沈んでいる。せん断破壊による損傷で自重を支えられなくなり、完全に壊れたのではないか」と話す。付近の橋脚の基部にも、同様の被害が見られた。ひび割れが斜めに入り、コンクリートが剥落して鉄筋が露出した(資料3)。

資料3■ 基部が損傷した橋脚は他にも
資料3■ 基部が損傷した橋脚は他にも
資料1の写真付近の橋脚。基部に斜めのひび割れが発生している(写真:村上 昭浩)
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 高橋教授によると、通常の耐震設計では、橋脚の基部は水平方向のひび割れが生じる曲げ破壊による壊れ方を想定する。斜めにひび割れるせん断破壊と異なり、鉛直力を支持できるので、軸方向の大きな沈下が起こりにくい。

 JR東日本はせん断破壊先行型と診断した橋脚を優先的に補強し、今回の地震が起こる前の22年3月に対策を終えた。現在は、曲げ破壊先行型と診断した橋脚の耐震補強を進めている。

 損傷した橋脚の上半分はせん断破壊先行型と判定し、鋼板を巻き立てる耐震補強を講じていた。基部を含む下半分は曲げ破壊先行型と診断。いずれ補強する予定だったものの、その前に被害を受けた(資料4、5)。当該箇所の壊れ方について、同社は調査中だとして、せん断破壊かどうか明らかにしていない。

資料4■ 橋脚の上半分は耐震補強済み
資料4■ 橋脚の上半分は耐震補強済み
橋脚の上半分には鋼板を巻き立てて補強していた。下半分は未補強だった(写真:村上 昭浩)
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資料5■ 高架橋の中層横梁がせん断破壊か
資料5■ 高架橋の中層横梁がせん断破壊か
資料1の写真の橋脚では中層横梁も損傷した(写真:村上 昭浩)
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