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中日本高速道路会社が発注した工事や業務で、期限までに完了できない契約違反が頻発している。履行の遅れを理由に「資格登録停止」を実施した件数が、2021年度の1件から22年度は15件に急増。同社は「事業進捗を遅らせるリスクとなり得る」として、対策に頭を悩ませている。

 この2年間で遅滞が最も長かったのは、東光コンサルタンツ(東京・豊島)が受注した床版取り換えの図面作成業務だ。中日本高速道路会社によると、他業務の対応に追われたり、協力会社との連携がうまくいかなかったりして、業務完了が1年ほど遅れた(資料1)。

資料1■ 資格登録停止措置の発表資料。履行遅滞は契約違反に当たる(出所:中日本高速道路会社)
資料1■ 資格登録停止措置の発表資料。履行遅滞は契約違反に当たる(出所:中日本高速道路会社)
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 受注者は事前に遅滞の届け出を提出していたものの、そこで申告した新たな期限も守れなかった。2回目の遅滞届け出で設定した期限も守れず、結局、3回目の遅滞届け出を経て成果物を納品した。

 中日本高速の資格登録停止とは、国などが実施する指名停止に相当する措置だ。1回の登録停止が複数の遅滞を対象とするケースもあるので、この2年間で期限までに終わらなかった案件は19件に上る(資料2)。工事が5件、設計などの業務が14件だ。業務のうち5件は履行期間を延長しても終わらず、契約を解除した。

資料2■ 遅滞した19件のうち14件が設計などの業務
資料2■ 遅滞した19件のうち14件が設計などの業務
中日本高速道路会社が2021~22年度に実施した資格登録停止措置の対象となった遅滞案件。契約解除となった案件を含む。着色部は工事、それ以外は設計などの業務。丸栄調査設計は3件、東光コンサルタンツは2件の業務を対象に、1回の登録停止を受けた。案件名は一部省略。「主な理由」は中日本高速や当該会社への取材に基づく(出所:中日本高速道路会社の資料や取材を基に日経クロステックが作成)
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 なぜこんなにも遅滞が増えたのか、中日本高速も理由が分からず困惑している。

 奇妙なのは、東日本高速道路会社や西日本高速道路会社では、こうした事例が増えていない点だ。期限までに完了できなかったことを理由にこの2年間で指名停止相当の措置を講じた件数は、東日本高速でゼロ。西日本高速では21年度に2件、22年度に1件のみだ。中日本高速の多さが際立っている(資料3)。

資料3■ 名古屋市にある中日本高速道路会社の本社が入居するビル(写真:日経クロステック)
資料3■ 名古屋市にある中日本高速道路会社の本社が入居するビル(写真:日経クロステック)
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 いったい背景に何があるのか。個々の案件の遅れた理由から、急増の背景を探ってみよう。

 工事の5件は、いずれも遅れた理由がはっきりしている。大成ロテック(東京・新宿)と日本道路の2件は、完了前に不具合が見つかったためだ。それを補修するため、工期に間に合わなくなった。中日本高速によると、大成ロテックの場合、工期末の2カ月ほど前の確認検査で剥落防止シートに浮きなどが判明。再施工が必要となり、完成が1カ月半ほど遅れた。

 攝津電機工業(大阪府箕面市)は、施工途中で下請け会社を変更することになり、工程に遅延が生じた。東芝プラントシステム(川崎市)は提出書類に不備、東芝インフラシステムズ(川崎市)は工程上のミスがあったからだという。工事については、共通する遅れの理由を見いだすのは難しそうだ。