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直径1.1mの狭いシールドトンネル内に土砂が流入し、作業員が2日間閉じ込められた大阪での事故。その原因は、シールド機の異常でもセグメントの破損でもなかった。事故後の現場を確認すると、土砂を密閉するはずの容器の蓋が開いていた。

 大阪府守口市で2021年12月、工事中のシールドトンネル内に作業員が2日間閉じ込められた事故は、掘削した土砂を収める容器の蓋が外れて土砂があふれ出たことが原因だったと関係者への取材で分かった(資料1)。土砂が坑内に堆積し、作業員の退路を塞いだ。シールド機やセグメントに異常はなかった。

資料1■ 作業員がトンネル内に閉じ込められた大阪府守口市の浄水場。2021年12月17日午前9時14分に撮影(写真:共同通信社)
資料1■ 作業員がトンネル内に閉じ込められた大阪府守口市の浄水場。2021年12月17日午前9時14分に撮影(写真:共同通信社)
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 事故が起こったのは、守口市内にある大庭浄水場と庭窪浄水場を結ぶ水道管を通すトンネルの掘削現場だ(資料2)。トンネルの延長は974mで、内径は1.1m。大勝建設(大阪市)・中林建設(同)JVが、泥土圧式シールド工法の一種である「DXRシールド」で掘削していた。1次下請けには、同工法をクボタと共同開発したクボタ建設が入っている。

資料2■ 浄水場同士を結ぶ水道トンネル
資料2■ 浄水場同士を結ぶ水道トンネル
事故があったシールドトンネルの位置図。大阪広域水道企業団の資料を基に日経クロステックが作成
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 DXRシールドは、トンネル内周に鋼製セグメントを組み立てて「さや管」とする工法だ。さや管の構築が終わったら、その中に口径700mmのダクタイル鋳鉄管を敷設する。

 シールド機で掘削した土砂はチャンバーからホースで搬出し、密閉型の「土砂スキップ」と呼ぶ容器に収容する(資料3)。このトンネルでは土砂スキップを2台つなぎ、その後方(坑口側)にバッテリー駆動の機関車を連結していた。

資料3■ 到達たて坑の16m手前で事故
資料3■ 到達たて坑の16m手前で事故
事故状況のイメージ。土砂スキップからあふれ出た土砂がトンネル内を塞ぎ、作業員が閉じ込められた。大阪広域水道企業団の資料を基に日経クロステックが作成
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 チャンバーからホースを経て土砂スキップに入るまでは全て密閉されている。トンネルの外に土砂スキップを搬送してから、側面の蓋を開けて土砂を排出する(資料45)。

資料4■ 左の写真は、発進たて坑内。右下の緑色の容器が土砂スキップ。右の写真は、バッテリー機関車(黄色い車両)を使い、土砂スキップを坑内へ搬送する様子(写真:大阪広域水道企業団)
資料4■ 左の写真は、発進たて坑内。右下の緑色の容器が土砂スキップ。右の写真は、バッテリー機関車(黄色い車両)を使い、土砂スキップを坑内へ搬送する様子(写真:大阪広域水道企業団)
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資料5■ 掘削土砂の搬出後にセグメントを設置
資料5■ 掘削土砂の搬出後にセグメントを設置
(写真:大阪広域水道企業団)
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