収束の気配が見えない原油や資材の高騰で、価格転嫁が喫緊の課題になっている。建設会社が資材価格の上昇分を請負代金に反映できなければ、収益悪化は止まらない。国土交通省は「スライド条項」の適切な運用などを求める通知を出した。
政府は2022年4月26日、民間資金を含めて事業規模が13.2兆円に及ぶ「総合緊急対策」を打ち出した。物価高騰への対策として、燃料油価格の激変緩和措置などの支援策に加え、価格転嫁の促進を挙げる。国土交通省も同日、原材料費などの取引価格を反映した適切な請負代金を設定するよう全国の自治体や建設業団体に通知した。
新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻などの影響による資材価格の高騰は、いまだに収束の気配が見えない。例えば異形棒鋼は、建設物価調査会の調べによると22年5月時点で1t当たり12万1000円。21年1月の6万7000円から81%上昇した(資料1)。
こうした資材価格の上昇を、いかに契約金額に反映させるかが目下の課題だ。例えば、1次下請け会社ならば元請け会社との、元請け会社ならば発注者との、それぞれの契約に価格上昇分を反映できなければ、受注者側にしわ寄せが来る。
国交省が価格高騰の影響について、元請け会社の現場所長らを対象に22年1~3月に実施したヒアリングの結果によると、発注者に対する契約金額変更の申し出を「受け入れてもらえない」との回答が16%に上った(資料2)。
入札で受注者が決まる公共工事の場合、契約前の価格上昇については、予定価格に反映されているかどうかが問われる。
国交省関東地方整備局技術調査課の荒井幸雄課長は、「国交省では毎月改定される最新の資材単価を使用しており、実勢価格との乖離は小さい」と説明する。
仮に低過ぎる単価で予定価格を設定すれば、その金額以下で札を入れる参加者が現れず、不調が頻発するはずだ。しかし、関東地整でそのような傾向はみられないという。