2022年3月の福島県沖地震で、仙台市において多数の宅地被害が明らかになった。業界で注目を集めているのは、震度5強だったにもかかわらず被害が拡大した点だ。東日本大震災で崩れなかった箇所や抑止杭の対策箇所での被災も散見されている。
「震度5強で、これだけの数の宅地被害は見たことがない」──。
2022年3月の福島県沖地震で、震央位置から90km以上離れた仙台市において300件程度の造成宅地の被害があることが、日経クロステックの取材で明らかになった(資料1)。
今回の地震の最大震度は6強。一方で、仙台市のK-NET仙台での震度は5強だった。同市では11年の東日本大震災でも盛り土造成地で多数の被害が報告されている。ただし当時の震度は6強だった。地盤の専門家などによると、震度5クラスの地震でこれほどの被害数の報告は珍しい。
福島県沖地震の後、仙台市在住の市民から報告のあった被害件数は22年6月30日時点で299件(資料2)。市職員が現地を確認し、擁壁や宅地地盤、法面、自然斜面などの被害状況を「危険度判定票」に基づいて分類したところ、以下のような内訳になった。特に危険で避難や立ち入り禁止措置が必要な「大被害」が39件、制限付きの立ち入りが可能な「中被害」が102件、当面は防災上問題のない「小被害」が158件だ。
ただ被災した場所によっては、住民から「東日本大震災のときよりも被害はひどかった」という声が上がっている。
例えば、太白区緑ケ丘4丁目で生じた擁壁の崩れが象徴的だ(資料3)。家屋がない盛り土造成地の擁壁が東日本大震災では崩れなかったのに、今回の福島県沖地震では崩れたのだ。
さらに、Googleストリートビューを見ると、震災当時は家屋が立っていた。つまり、家屋がない現在は当時よりも上載荷重が減るため、地震でより変動しづらい宅地であったにもかかわらず、崩れたというわけだ。