2000年代半ばの入札改革で一度は廃止した指名競争入札を、復活させる動きが活発になってきた。福島県では、地元企業の育成を目指して試行した指名競争で効果が見られたとして、本格導入に移行しそうだ。国土交通省でも、工事発注の迅速化などを目的とした指名競争がここ数年で急増している。
談合防止を目的に廃止した指名競争入札が、福島県で本格的に復活する可能性が高まってきた。「2020年度から試行している指名競争は、地元企業の受注率上昇や受注の固定化解消など一定の効果が見られた」と、福島県総務部入札監理課の菊地照道副課長は話す。
県では、過去に何度も指名競争入札と条件付き一般競争入札(以下、一般競争)の間で方針が揺れてきた(資料1)。06年に発覚した官製談合事件をきっかけに、県は07年度に指名競争を撤廃し、全て一般競争に移行した。しかし、入札不調が続出したため08年度に指名競争を復活。予定価格1000万円未満の一部の工事で試行したものの、不調が減らなかったため1年で中止した。
その後、災害対応などの観点から、地域の建設会社に対する保護・育成の機運が次第に高まってきた。福島県では指名競争の中止から10年ほどたった18年度、地元企業の受注割合を高めるため、地域貢献の評価に重点を置く「地域密着型」の総合評価落札方式を導入した。その結果、導入前よりも地元企業が受注できるようになったものの、高い評価を得られる一部の企業に受注が固定化する傾向が表れた。
そこで県は、地元企業の保護・育成を目的に、20年度から一般土木工事や舗装工事など5工種で、「地域の守り手育成型方式」と呼ぶ指名競争の試行を始めた。対象は、土木部と農林水産部が発注する予定価格3000万未満の一部工事だ。
同方式では、県が事前に国や県、市町村の災害対応や除雪業務、維持補修業務の受注実績などを基に「地域の守り手育成型企業」を認定しておく。工事を発注する出先の建設事務所は、管内にある認定企業の中から複数の指名候補を選ぶ。