全国各地で進む水道管の老朽化。更新事業の効率化は待ったなしだ。大阪市は民間事業者との協力、奈良県は県内の水道一本化で解決を図るが、いずれも難航。事業費増大のリスク分担や水道料金の地域格差など、多くの問題が事業化を阻む。
大阪市は民間事業者に運営権を売却するコンセッション方式による水道管更新計画が頓挫したことを受け、従来型のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で実施する「新プラン」を2022年9月にまとめた。管路の更新工事をPFI方式で実施するのは、全国初だ。法定耐用年数の40年を超える管路の割合(老朽管率)が政令市で最悪の約5割に達する大阪市では、更新と耐震化が喫緊の課題となっている(資料1)。
当初はコンセッションによって、市内全域に及ぶ延長1800km以上の配水管を22年度から16年間で更新し、老朽管率を34%以下に引き下げる計画だった。事業費の総額は最大3750億円と設定した。
しかし、公募に応じた2つの企業グループはいずれも採算が取れないとの理由で辞退した。大阪市のコンセッション事業では、想定外の地下埋設物など事業費増額リスクを民間事業者が原則として負う取り決めだったからだ。工事箇所に文化財や輻輳(ふくそう)管が見つかった場合、工事中断や工期延長、工法変更などが必要となって工費が膨らむ。民間に負担が偏っていたことが、計画頓挫の主な原因といえる。
「地中探査技術の開発も進むが、現状では掘削するまで、地下埋設物の有無が分からない」。大阪市水道局総務部連携推進課PFI事業調整担当の吉澤源太郎課長代理は、こう話す。