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災害復旧工事を終えた直後に再び崩落した岐阜県高山市の山岳道路「乗鞍スカイライン」。県の調査で、この2年間に地山の細粒分が減少し、地下水位が2mほど上昇していたことが判明した。復旧工事の設計時に想定していなかった地中の変化が、円弧滑りを引き起こした。

 検証の結果、復旧工事の設計と施工はいずれも妥当だった──。

 乗鞍スカイラインを管理する岐阜県が、専門家に意見を聞いたうえで出した結論だ。

 乗鞍スカイラインでは2020年7月、北端の平湯峠ゲートから1kmほど離れた路肩が豪雨で崩落した。その後、県が復旧工事を進め、21年7月から山側の1車線を使って片側交互通行を続けていた。全ての復旧工事を終え、対面通行への移行を翌日に控えた22年9月9日、大雨でもないのに再び崩落した(資料1、2)。

資料1■ 西側から見た崩落現場。北側の区間では、2020年7月の被災箇所よりも山側から崩れ落ちた(写真:岐阜県)
資料1■ 西側から見た崩落現場。北側の区間では、2020年7月の被災箇所よりも山側から崩れ落ちた(写真:岐阜県)
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資料2■ 北側から見た崩落現場。こちら側から崩壊が始まったとみられる(写真:岐阜県)
資料2■ 北側から見た崩落現場。こちら側から崩壊が始まったとみられる(写真:岐阜県)
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 今回の崩落を受けて、県は有識者などでつくる対策検討会(委員長:沢田和秀・岐阜大学工学部付属インフラマネジメント技術研究センター教授)を設置。22年10月28日に開いた第2回会合で、斜面崩壊の原因や前回の復旧工事の妥当性などを明らかにした。

 県が結論付けたように、復旧工事の設計や施工に問題がなかったのなら、なぜ崩落したのか。

 まずは、前回の復旧工事の概要を見ていこう。工事は3つのステップで進めた(資料3、4)。ステップ1として、崩壊でむき出しになった道路下の地山をコンクリート吹き付けと鉄筋挿入で補強。ステップ2で、道路の山側を切り土して1車線分の道幅を確保した。この段階で片側交互通行を開始。ステップ3で、谷側を垂直擁壁や補強土壁によって盛り土し、復旧工事を完了した。

資料3■ 圧縮補強土で擁壁基礎を支える
資料3■ 圧縮補強土で擁壁基礎を支える
垂直擁壁区間の標準断面図(出所:岐阜県の資料を基に日経クロステックが作成)
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資料4■ 3つのステップで復旧
資料4■ 3つのステップで復旧
2020年7月の被災の後に実施した復旧工事の概要(出所:岐阜県の資料を基に日経クロステックが作成)
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