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富士山噴火のハザードマップの改定で、被害想定の範囲が大幅に拡大した。溶岩流や火砕流は交通インフラを巻き込み、人や物の流れを寸断する恐れがある。ハザードマップを読み解き、噴火の具体的な被害を見ていく。

 富士山の噴火に関するハザードマップが2021年に改定されたことをご存じだろうか。想定される溶岩噴出量は従来の2倍に増加。噴火が最大規模だと、富士山から数十キロメートル以上離れた地域まで溶岩が流れる想定だ。

 溶岩流が到達する恐れのある自治体は、静岡県と山梨県の15市町村から、神奈川県を含む3県27市町村に拡大した(資料1)。

資料1■ 溶岩流が3県を襲う
資料1■ 溶岩流が3県を襲う
改定した溶岩流のハザードマップ(右)と従来のマップ(左)。着色部分は、各火口から出た溶岩流の到達想定範囲で、被害を受ける可能性のある地域を示す。1度の噴火で全ての範囲には達しない。オレンジの点線は改定に伴って、新たに溶岩流の到達想定範囲に加わった市区町。(資料:富士山火山防災対策協議会)
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 噴火の影響が及ぶ想定範囲を示す地図「富士山ハザードマップ」は、主に溶岩流や火砕流などの被害を扱っている。内閣府などが04年に作製。その後、静岡、山梨、神奈川の3県などで構成する富士山火山防災対策協議会が21年3月に改定した。

 同協議会の内部組織で、火山の専門家らによる富士山ハザードマップ(改定版)検討委員会(委員長:藤井敏嗣・山梨県富士山科学研究所長)が、04年以降に得た新たな知見を踏まえ、18年からマップの見直しを進めていた。

 改定では、噴火のシミュレーションの対象年代を「3200年前~現在」から、特に噴火活動が活発な「5600年前~現在」に拡大した。

 改定に伴って、噴火の被害想定規模が拡大した。例えば、火口から噴出した溶岩が地表を流れ落ちる溶岩流。富士山の噴火で想定する溶岩の噴出量は13億m3で、従来想定の約2倍まで増えた。

 被害想定の参考にする噴火を1707年の宝永噴火から、より大規模な864~866年の貞観噴火に変更したからだ。貞観噴火では大量の溶岩流が噴出し、富士山のふもとの地形を変えるほどの巨大災害となった。

 溶岩流の流下経路などのシミュレーションを実施する火口も、従来の44カ所から252カ所に増やした。

 山梨県富士山科学研究所の吉本充宏主幹研究員は、「より詳細な地形データを採用した。改定前は谷や川など細い地形を反映できなかった。谷や川を流れる溶岩は、平野と比べて冷えにくく、より遠い範囲まで到達する」と説明する。