全3524文字
PR

溶岩流や火山灰の被災範囲が明らかになり、自治体や企業は対応に追われている。しかし、ほとんどの自治体が「対策を検討中」で、噴火の備えは万全と言えない。富士山の噴火対策が進みにくい理由を探った。

 いつ起こってもおかしくない富士山噴火。それに対する自治体や企業の備えは現時点で十分とは言えない。対策が進まない理由は3つある。

 1つ目は、自治体が富士山ハザードマップ改定に伴う避難計画の見直しに追われており、土木構造物への噴火対策、堆積した溶岩流や火山灰の処理に関する計画に着手できていないという現状がある。「まずは避難」というのが噴火対策の第一歩だ。

 ただし自治体によっては、避難計画の見直しさえも時間がかかりそうだ。避難計画作成の進捗をみてみよう。ハザードマップの改定を踏まえ、静岡、山梨、神奈川の3県などで構成する富士山火山防災対策協議会は2022年3月30日、避難計画見直しの中間報告をまとめた。

 14年に作成した従来の避難計画は、火砕流や大きな噴石、溶岩流(3時間以内)が到達するエリアの住民に噴火前の避難を促していた(資料1)。避難手段は原則として自動車。対象エリアの推計人口は13年時点では約1万6000人にとどまっていた。

資料1■ 3時間以内に溶岩流が到達する範囲の一般住民は噴火後に避難
資料1■ 3時間以内に溶岩流が到達する範囲の一般住民は噴火後に避難
富士山の噴火に関する避難計画の見直し案。上は見直し前、下は見直し後(資料:富士山火山防災対策協議会)
[画像のクリックで拡大表示]

 改定したハザードマップを従来の避難計画に適用した場合、対象エリアで噴火前避難が必要なのは約11万6000人と従来の7倍に増える。これだけの住民が噴火前から自動車で一斉に避難を始めると、深刻な渋滞が発生する恐れがあるという。

 中間報告では、障害者や高齢者など要支援者を除き、渋滞が想定される地域では原則として徒歩で避難する計画に変更する方針を示した。市街地など勾配が緩い地域における溶岩流の速度は人が歩くよりも小さいためだ。

 加えて、溶岩流が3時間以内に到達するエリアでは、要支援者に限って、噴火前に避難を始める方針に変更した。協議会は、降灰からの避難方法なども検討し、22年度に最終報告をまとめる予定だ。