国土交通省土佐国道事務所の道路改良工事で初めて、建設3Dプリンター製の集水升が設置された。これを皮切りに、2022年はあちこちの公共工事で印刷造形する計画が動き始めている。スタートアップ企業のPolyuse(ポリウス、東京都港区)によると、20~30件で実装される。
2022年2月25日、高知県安芸市の南国安芸道路赤野橋下部外工事の現場に、約100人の見学者が押し寄せた(資料1)。目当ては、同年1月に現地に設置した建設3Dプリンター製の集水升だ。据え付けた後を見る限り、通常の集水升といわれても、分からない(資料2)。
寸法は1m×1m×1m(資料3)。造形したのは、セメント系建設3Dプリンターの開発を手掛けるポリウスだ。公共工事において3Dプリンターで造形した本設構造物の設置は初の試みだけあって、見学者の関心は高い。
同工事は高知市に本社を構える入交建設が受注した。監理技術者を務めた同社土木部の石川淳課長は、3Dプリンターの採用のきっかけを次のように話す。
「建設業界は少子高齢化で働き手不足。特に若い担い手が少ない。新しい技術や魅力的な技術が必要だと思っていたときに、たまたま出合ったのが型枠不要でコンクリート構造物を造形できる3Dプリンターだった」(石川課長)
3Dプリンターを公共工事で使う試みは、国交省が取り組んでいる「生産性向上チャレンジ工事」の一環だ。受注者が施工計画書で省人化や生産性向上の取り組みを提案。効果が認められれば、発注者は工事成績評定で加点する仕組みだ。費用は原則、受注者が負担する。
集水升は神奈川県鎌倉市にあるポリウスの工場で、印刷造形した。門形クレーンでノズルを移動させながらモルタルを連続的に吐出して積層し、構造物を造形していく。
「側溝と接続する空洞部の周りの材料を固めに練る必要がある。データから読み取り、モルタルと水との比率を自動で変換している」と、ポリウスの大岡航代表取締役COO(最高執行責任者)は話す。