大手だけでなく中小の建設会社も関わり始めた建設3Dプリンター。しかしいまだにどのようなメカニズムでプリントし、どのような特徴があるのか、説明できない人は多い。ここでは、今さら聞けない建設3Dプリンターの基本事項についておさらいする。
建設3Dプリンターでよく使われるのがセメント系の材料だ。プリンターの先端にあるノズルを水平移動させながら一定量のモルタルを連続して吐出し、1層ずつ積み重ねて複雑な形状の構造物を造形していく。1層当たりの厚さは1cmから数センチメートルまで。プリンターによって異なる(資料1)。
積層経路は一筆書きが基本だ。大林組のように、プリンターとポンプを連動して制御し、吐出の開始や停止を自在に行えるようにして、経路の自由度を高めているケースもある。
材料に用いるモルタルには、圧送時に高い流動性を持ち、ノズルから吐出した後は粘度が高まって崩れにくくなる性能(チキソトロピー性)が求められる。積層しても重みで崩れないように、短時間で固まる性質も欠かせない。ただし、固まるのが早すぎると層間に非連続層が生じやすくなるため注意が必要だ。
安定して印刷するには、材料の配合やプリンターの制御などを最適化しなければならない。このため、プリンターの開発には土木や建築だけでなく、材料や機械、ITの知識が不可欠になる。
プリンターにはいくつかの種類がある(資料2、3)。例えば、産業用ロボットアームをベースにしたプリンターは制御しやすく、細やかなデザインの構造物を印刷するのに向いている。ただし、一度に印刷できるサイズには限りがあり、大規模な構造物をつくるには部材を分割して印刷したうえで、現場で組み立てる必要がある。
一方、門形のプリンターは大型の構造物を現場で印刷するのに向いている。アーム型に比べると繊細なデザインは得意でないものが多い。クレーンの先端にノズルを取り付けて印刷するタイプなどもある。
プリンターの価格は印刷可能なサイズによって異なるが、数千万円が相場。1億円を超える製品もある。ただし、製品としての完成度はまだまだ。ベータ版の位置づけで販売するケースが多い。海外製のプリンターは日本で入手しにくい材料を使用しているケースが多いため、購入には注意が必要だ。