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夜間に割増し賃金を払って、短時間で工事せざるを得ない鉄道。騒音にも気を配る必要がある。そんな制約を一挙に解決する方法としてJR東日本が目を付けたのが、建設3Dプリンターだ。2022年は駅舎に置くベンチを3Dプリンターで造形するプロジェクトを東京大学と連携して実施する。

 トロ台車に乗せた建設3Dプリンターがレールの上を動いて、所定の位置に止まり、柱の型枠部材を数時間で造形していく──。線路沿いに土木構造物が配置されている鉄道工事特有の3Dプリンターの使い道を想定した実験を、JR東日本と會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)が実施した(資料1)。

資料1■ JR東日本と會澤高圧コンクリートによる共同実験の様子。レールに乗せた3Dプリンターで、4本の柱を造形した(写真:JR東日本)
資料1■ JR東日本と會澤高圧コンクリートによる共同実験の様子。レールに乗せた3Dプリンターで、4本の柱を造形した(写真:JR東日本)
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 「鉄道工事は3Dプリンティングの技術を導入しやすい土俵がある」。こう話すのは、JR東日本東京工事事務所総務課の井口重信副課長だ。

 鉄道工事は夜間のき電停止後に実施して、翌朝の運行開始までに終わらせる必要がある。施工時間が非常に短く、人海戦術で工事を切り盛りするのが一般的だ。狭い場所に多くの人が集中するため、安全にも特に留意する必要がある。

 このように鉄道工事は、施工現場の時間・空間的制約が多い。その点、3Dプリンターを使えば、人を減らせ、安全にも寄与するため、これらの問題を一挙に解決できる。都市部では、近隣住民とのトラブルのもとになる騒音も減らせる。

 レール上でプリンターを移動させる方法以外にも、線路と線路の間にプリンターを設置する施工方法も考えられる。営業の障害にならなければ、24時間の無人施工も夢ではない。