岐阜大学などはICT建機と吹き付けタイプのプリントを組み合わせた補修・補強技術の展開を目指す。地方の建設会社が使い慣れた重機に搭載することで、3Dプリンティング採用へのハードルを下げる。地方のコンクリート製品メーカーなどが自由に使えるように、共有の3Dプリンターを構築する方針だ。
「建設3Dプリンターは新設だけでなく、補修・補強でいかにして使うかを考えなければならない」。こう話すのは、岐阜大学工学部社会基盤工学科の国枝稔教授だ。
岐阜大学は日本建設機械施工協会施工技術総合研究所(静岡県富士市)など7者と共同で、吹き付けタイプのプリントで補修・補強する技術を開発した(資料1、2)。3Dプリンティング技術とICT(情報通信技術)建機とを組み合わせた「On-Site Shot Printer(オンサイト・ショット・プリンター)」だ。
下向きに噴き出して積層させるだけでなく、垂直壁面へ吹き付けられるのが特徴だ。そのため、補修・補強へ容易に適用できる。現在改良中の完全乾式タイプの場合、ノズル先で水と混ぜて吹き付けるため、練り混ぜた後のスランプを試験せずに出来形で確認でき、検査や品質管理の省力化につながると期待されている。
国枝教授が建機を使ったプリンター技術にこだわるのには、理由がある。主な狙いは地方の中小建設会社における普及だ。
建設3Dプリンターは現在高額なため、地方の一企業が購入することは現実的ではない。とはいえ、誰でも気軽に使える状態にならなければ普及は難しい。その点、リースというビジネスモデルがある建機に搭載できるプリンティング技術は採用への壁が低い。
加えて、普段からなじみのある建機がそれなりの精度で動けば、適用までの道のりも短い(資料3)。
もちろん課題もある。吹き付けの場合、表面の仕上げが粗くなるため、型枠による施工と同じ品質を確保するのは難しい。そこで、岐阜大学などは表面を奇麗に仕上げる吹き付け技術ではなく、左官の仕上げロボットの開発で解決を目指す。