2022年は土木だけでなく建築でも建設3Dプリンターを使った計画が進行している。倉庫や住宅など規模の大きな構造物を造形する「初事例」が国内で出ている。土木での爆発的な普及には、3Dプリンターによる生産性向上効果の実証が欠かせない。
2022年2月中旬、群馬県渋川市内で建設3Dプリンターを用いて「印刷」した倉庫の建設が進んでいた(資料1)。建物の規模は幅約6m、奥行き約3~4m、高さ約3m。延べ面積約18m2の平屋だ。
構造種別は鉄骨造。6本の柱で屋根を支える。壁全体をセメント系3Dプリンターで印刷した。スタートアップ企業のPolyuse(ポリウス、東京都港区)とMAT一級建築士事務所(群馬県東吾妻町)の合作だ。同市に建築確認を申請し、22年1月24日付で確認済み証が交付された。
印刷した壁を構造体として使用するわけではないものの、建設3Dプリンターでの造形を前提に確認済み証の交付を受けた建物は国内初とみられる。
他方、22年3月にはスタートアップ企業のセレンディクス(兵庫県西宮市)が、建設3Dプリンターを使って球状の小規模住宅「Sphere(スフィア)」を施工した(資料2)。
同社が実際の住宅を建設するのは初。3Dプリンターでつくった部材を建設地で組み立てる施工にかかった時間は何と1日を切る。施工を担当したのは百年住宅(静岡市)、楓工務店(奈良市)、辺重(なべじゅう)(群馬県太田市)などだ。愛知県小牧市にある百年住宅の工場に建設した。
スフィアの原材料はモルタル。建設3Dプリンターで外壁などの部材を工場でつくり、建設現場に運んだ。躯体全体の重量は約20tに及ぶ。4つの部材で構成し、現地で重機を使って組み立てた。
構造形式は、鉄筋コンクリート(RC)造だ。3Dプリント部分は、内外壁兼打ち込み型枠の役割を果たす。球状の構造は一般の住宅に比べて頑強であり耐震性も十分備えているという。今後、実物大の建物で耐震性を確かめる実験を行う考えだ。
セレンディクスは、建設3Dプリンターなどで造形する延べ面積100m2の住宅を300万円で提供することを目標としている。「自動車を購入できる値段で家が買えるようにしたい」。同社の飯田国大・最高執行責任者はこう話す。