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コロナ禍での「3密回避」などで、防災訓練を実施しにくい環境になった。若年層の参加率が芳しくない現実もある。こうした状況を解消しようと、岐阜県大垣市が始めたのがデジタルトランスフォーメーション(DX)を絡めた防災施策だ。どこに居ても端末から参加できる新しい防災訓練システムに期待を寄せる。

 3密回避で防災訓練を思うように企画できない、たとえ実施できたとしても参加する市民が少ない──。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、多くの自治体が防災訓練の実行性の低さに頭を悩ませる。

 このままでは市民の防災力の低下が懸念されるとして、新しい防災訓練の在り方を模索し始めたのが、岐阜県大垣市だ。市民がスマートフォンなどを活用して手軽に参加できる防災訓練システム「自宅de防災訓練」を開発している。2022年1月に実施した実証実験では、6組の親子が参加(資料1)。上々の評価を得た。

資料1■ 2022年1月に実施したオンラインによる実証実験の様子。6組の親子にデジタル防災訓練システムのパイロット版を体験してもらった。コンテンツに触れることで参加者に防災についての気づきを促す可能性を感じさせた(写真:大垣市)
資料1■ 2022年1月に実施したオンラインによる実証実験の様子。6組の親子にデジタル防災訓練システムのパイロット版を体験してもらった。コンテンツに触れることで参加者に防災についての気づきを促す可能性を感じさせた(写真:大垣市)
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 この取り組みは、NPO法人のコミュニティリンクが運営する公民連携の枠組み「アーバン・イノベーション・ジャパン(UIJ)」を活用して市が進める防災施策のデジタル化推進事業の一環だ。DXを絡めた新しい防災施策を民間から公募。選定した企業との二人三脚で、時間や場所を問わず参加可能なデジタル防災訓練システムの実現を目指している。

 システム上で提供する訓練コンテンツには、若年層の防災意識を向上させるツールや災害に対する想像力を養うような仕掛けを盛り込む方針だ(資料2)。

資料2■ 若年層の参加を促す仕掛けを盛り込む
資料2■ 若年層の参加を促す仕掛けを盛り込む
公募時に示した開発システムのアウトライン(資料:アーバン・イノベーション・ジャパン)
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 「親子で楽しみながら防災訓練ができるようにクイズやゲームの要素を取り入れたり、災害時の状況をイメージしやすいAR(拡張現実)を導入したりすることを考えている」。システムの開発初期の主要メンバーである大垣市生活環境部環境衛生課の山田芳弘主幹は、このように語る。