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新型コロナウイルス禍で急減した海外土木工事の受注が回復基調にある。政変や戦争の影響などで安定した売り上げが見込みづらいとはいえ、将来の国内需要減への備えや労働力の確保に向けて、それでも海外へ挑む。

 「コロナにミャンマー、そしてロシアによるウクライナ侵攻。トリプルパンチだ」。ある建設業界団体の職員はため息をつく。2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各地で建設工事に制約が生じた。特にロックダウンが起こった都市では工事が中断するなど、深刻な影響が及んだ(資料1)。

資料1■ 海外事業は三重苦に見舞われている

取材を基に日経コンストラクションが作成
取材を基に日経コンストラクションが作成
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海外建設協会の山口悦弘副会長は2022年5月25日の会見で先進国を中心とした回復基調に触れた一方、ロシアによるウクライナ侵攻がもたらす原燃料価格の高騰や人件費上昇などの不透明さに懸念を示した(写真:日経コンストラクション)
海外建設協会の山口悦弘副会長は2022年5月25日の会見で先進国を中心とした回復基調に触れた一方、ロシアによるウクライナ侵攻がもたらす原燃料価格の高騰や人件費上昇などの不透明さに懸念を示した(写真:日経コンストラクション)
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 21年にはミャンマーで軍事クーデターが勃発し、工事の中断や遅延が相次いだ。22年2月にはロシアがウクライナに侵攻を開始したことで、欧米などが原油をはじめとした資源の禁輸を決定。物流網の混乱が生じ、原材料や燃料の高騰に歯止めがかからなくなっている。

 新型コロナウイルスの感染拡大はピークから脱した地域が多いものの、資材の調達難や価格上昇、輸送コストの増大などに伴う追加コストの懸念がいまだつきまとう。清水建設では22年5月に、ガーナの施工現場で注文した燃料を数量分調達できない事態に陥ったという。

 海外建設協会の山口悦弘副会長は工事の追加コストについて、「契約に明記してあるから大丈夫ということはまずない」と語る。今後、発注者との交渉トラブルが増える可能性があるとし、他国の建設企業と連携した対応も検討している。

 受注でもコロナ禍の影響は大きい。同協会によると、会員企業における20年度の海外土木工事受注額の合計は19年度比64%減の2035億円。21年度の受注額は19年度比75%に当たる4278億円まで戻ったものの、コロナ禍前の水準には届いていない。

 コロナ禍の影響は工事の前段階である設計の受注や案件化調査にも出ている。国際協力機構(JICA)によると、20年度と21年度はコロナ禍で海外渡航が制限されたことで調査団の現地派遣が進まず、円借款事業の案件化調査の件数が減少した。

 建設コンサルタントの受注も減った。国際建設技術協会によると、日本の主要建設コンサルタント会社における20年度の海外受注額は3年ぶりに前年度を下回り、合計1004億5000万円だった(資料2)。

資料2■ コロナ禍の渡航制限で建設コンサルタントの受注が減少
資料2■ コロナ禍の渡航制限で建設コンサルタントの受注が減少
国際建設技術協会の資料を基に日経コンストラクションが作成
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