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一口に海外といっても、市場開拓だけではない。そこでしか得られない技術や人材も重要な視点だ。日本工営はコロナ禍でも海外部門の社員を国内で活躍させ、全体の業績を伸ばした。長期的な競争力向上を目指す大手コンサル・建設会社の海外戦略を追う。

 2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が始まったにもかかわらず、日本工営は21年6月期の連結受注高がコロナ禍前の19年6月期を上回った。好調を後押しする役目を担ったのが海外部門に所属する社員だ。コロナ禍で現地への渡航に制約が生じ、海外部門の稼働率は低下していた。その代わりに、需要が増えて人手が足りなくなっていた国内事業に参画したのだ。

 21年6月期は同社のコンサルタント国内事業の連結受注高が620億円と、前期から27億円増加した。これを若干上回る約28億円分を海外部門の社員が手掛けた。コンサルタント海外事業の売り上げでも約10億円の増加に貢献。増収の半分を賄った(資料1)。

資料1■ 海外人材を国内に振り向け増収に寄与
資料1■ 海外人材を国内に振り向け増収に寄与
日本工営が2021年6月期に国内外のコンサルタント事業で実施した取り組み。受注高と売上収益はそれぞれ連結。取材を基に日経コンストラクションが作成
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 「コロナ禍前から立てていた計画がうまく機能した」。同社専務執行役員の金井晴彦コンサルティング事業統括本部長は国内外の事業連携をこう評価する(資料2)。

資料2■ 日本工営専務執行役員の金井晴彦コンサルティング事業統括本部長は海外領域でのさらなる成長を狙う(写真:日経コンストラクション)
資料2■ 日本工営専務執行役員の金井晴彦コンサルティング事業統括本部長は海外領域でのさらなる成長を狙う(写真:日経コンストラクション)

 実は、同社は20年7月に、コンサルタント国内事業本部とコンサルタント海外事業本部、そして技術本部傘下の中央研究所の3つを統合。国内外の人材を融通しやすくしていたことで、コロナ禍による業務量の変化にも柔軟に対応できた(資料3)。

資料3■ 国内外の部門を統合して連携しやすくした
資料3■ 国内外の部門を統合して連携しやすくした
日本工営の資料や取材を基に日経コンストラクションが作成
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 研究所で開発した技術をスムーズにグローバル展開できるようになる上、社員にとっては国内外の部署異動がしやすくなる。金井事業統括本部長は「海外事業は大規模な案件をマネジメントするような業務が多く、国内事業と求められる役割が大きく異なる」と説明する。国内外のどちらでも活躍できるハイブリッド人材の育成に力を注ぐ考えだ。