建設業界において、国内外の人材流動化や中小企業の海外進出は従前からの課題だ。コロナ禍以前から表彰制度の充実を図るなど、国は海外への進出を後押ししている。現地の発注者向けに品質評価や積算の制度整備・運用を支援する取り組みも進む。
2022年3月24日、国土交通省は海外の建設プロジェクトに携わった優秀な技術者の表彰式をオンラインで開催した(資料1)。同省が20年度に創設した「海外インフラプロジェクト技術者認定・表彰制度」の一環で、今回が2回目の開催となる。国土交通大臣賞を15人に、国土交通大臣奨励賞を9人に授与した。
同制度の狙いは、国内外での建設技術者の流動化の促進にある。海外での建設工事や業務の実績はこれまで、国内工事の実績と比べて評価しづらかった。そのことが、国内の建設技術者が海外プロジェクトに参加したり、海外で活躍する技術者が国内に戻ったりしようとする際の障害となっていた。
そこで国交省が創設したのが同制度だ。完了した海外の工事や業務について実績認定や表彰を実施し、国内の工事や業務で同種のプロジェクトの入札に活用できる(資料2)。
海外プロジェクトの実績は技術者単位で申請する。「マネジメント」「技術的課題への対処」「現地政府など関係機関との協議や調整における工夫」の3つの軸で国交省が評価する。得られた認定や表彰は工事・業務の実績データを記録するコリンズ・テクリスに登録できる。
制度を運用して2年目に当たる21年度は、申請可能なプロジェクトの期間を前回の過去5年から過去10年に延長した。さらに施工監理や設計に携わる技術者は現地へ渡航しなくても、オンラインで現地政府などと業務を進めて成果を挙げた場合、応募対象に含める方針を要領に明記。新型コロナウイルス禍が続く状況に配慮した。最終的に34団体の計213事業について、695人にプロジェクト実績の認定証を発行した。
国交省総合政策局海外プロジェクト推進課によると、コリンズ・テクリスへ実績の登録が進む一方、22年3月下旬時点で国内の入札に活用された例はまだ出ていない。
コロナ禍で浮き彫りとなったように、海外案件の数が実質的に変動することは今後も起こりうる。加えて、国内事業の先行きも見通しづらい。そのため、国内外の事業で人員を柔軟に配置できるようにしておくことが重要な意味を持つ。
「若い技術者が海外へ出て行く意欲も後押ししたい」(海外プロジェクト推進課)