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下水道工事を手掛けるヤスダエンジニアリングは、コロナ禍のロックダウンを乗り越え海外展開を進める。推進工法の国内市場の伸びが見込みづらい中、海外での事業拡大に活路を見いだす。国内外の異なる現場で若手に経験を積ませ、次世代の人材育成を図る。

 大阪府忠岡町にあるヤスダエンジニアリング(大阪市)の関連会社工場。推進工法の掘進機が並ぶ敷地の奥の建屋で、若いミャンマー人たちが真剣なまなざしで作業にいそしむ。

 作業は、吊り下ろされた掘進機のユニットにエナメル線を巻き付けるもの(資料1)。掘進機にコイルの役割を持たせて、掘進中に磁界を発生させるのだ。地中に金属埋設物があると二次磁場が生じる。これを計測することで、掘進機から約1mの範囲にある埋設物を検知できる。

資料1■ 掘進機のユニットにエナメル線を巻き付けてコイルを作り、磁気探査機能を持たせる(写真:日経コンストラクション)
資料1■ 掘進機のユニットにエナメル線を巻き付けてコイルを作り、磁気探査機能を持たせる(写真:日経コンストラクション)
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 同社は磁気探査機能を持たせた掘進機を、ベトナムのハノイ市で施工中の現場へ順次送り込んでいる。現地の地中にはベトナム戦争時の不発弾などが埋まっている可能性が高いため、同社の探査技術が重宝される。

 ヤスダエンジニアリングは韓国や台湾を皮切りに2005年から海外展開に乗り出し、現在はベトナムで推進工事の拡大に力を注ぐ。海外で活躍する人材として期待されるのが、冒頭のミャンマー人をはじめとする外国人だ。国内で経験を積ませて海外の現場へ逆輸入する。

 海外現場を経験した外国人が、国内の施工現場に加わって活躍することも珍しくない。ベトナム人のダン・ホアイ・タイン氏は、近畿地方で進行中の推進工事で作業員を率いる。現場では掘進機が超低速で地中埋設物に近づきながら切削する「ミリングモール工法」を採用し、鋼矢板や鉄筋コンクリート(RC)杭を避けずに掘進する。

 タイン氏はベトナムで採用された人材の1人。現地で同社の推進工事を経験した後に来日し、現在は家族を帯同している。人手不足が深刻な中、優秀な外国人は貴重な戦力だ。タイン氏は「日本は土質が多様で、求められる施工技術が高い」と語る。国内で腕を磨き、故郷のベトナムで下水道工事を通じて川の水をきれいにしたいと意気込む(資料2)。

資料2■ ヤスダエンジニアリングのベトナム人社員。日本とベトナムの両国で推進工事の経験を積んだ(写真:日経コンストラクション)
資料2■ ヤスダエンジニアリングのベトナム人社員。日本とベトナムの両国で推進工事の経験を積んだ(写真:日経コンストラクション)
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 同社は海外展開と併せて外国人の採用を増やしており、国内には現在25人の外国人がいる。安田昇取締役経営企画本部長は「3~4年後には海外法人で採用した人が来日するケースも含めて、外国人を現在の1.5~2倍の水準に増やしたい」と語る。