
国土交通省は、国や自治体が発注する小規模な現場に対し、利用が伸び悩むICT(情報通信技術)施工を後押しする。
2022年3月31日に、安価で汎用的なICT機器を小規模な現場で導入する際の方針を記載した実施要領や積算要領などを公表。同年6月に要領の対象工事を拡大する。22年度にさらなる関連施策を打ち出し、小規模な工事の受注が多い中小の建設会社に対して、ICT機器の導入を促す。
要領の主な対象は、1000m3未満の土工事や床掘り工事、法面工事だ。
直轄工事でICT機器の導入を義務化するといった拘束力はない。施工者が同機器の導入を検討する際に、その判断材料として活用することを想定している。
実施要領は、操縦者を補助するマシンガイダンス機能をバックホーに後付けする装置に着目した点が特徴(資料1)。実施要領では、後付け型装置の使用方法や、同装置を使用した場合の工事成績の加点方法など、各種基準を盛り込んだ。
後付け型装置は一般的なバックホーで使えるため、ICT建機の購入費用を抑えられるメリットがある。小規模な現場を担う中小の建設会社でも導入しやすい。ICT施工導入のハードルを下げることにつながりそうだ(資料2)。
積算要領では、後付け型装置を使って施工した場合の事業費の目安を示した。受注者が同装置を導入する際の見積もりの参考になる。
小規模現場に適した3次元計測技術を用いた出来形管理の監督・検査要領も22年3月31日に公表した。対象は施工土量が1000m3未満の小規模な土工事。同技術を用いた監督・検査の手法を明確にすることで、現場での活用を促す。
具体的な方法として、3次元レーザースキャナー搭載型の市販スマートフォンを用いた測量方法を盛り込んだ(資料3)。
モバイル端末を活用した出来形管理の要領については、22年度中に、土工事と併せて施工することが多い側溝などの小規模な構造物まで適用範囲を拡大する予定だ。
国交省はレーザースキャナーについて、ドローンや地上に設置するタイプの製品を用いた土工事の出来形管理要領を16~19年に順次、公表済み。しかし、いずれも専用の機材などが必要なため小規模な現場では導入のハードルが高いという課題があった。
国交省総合政策局公共事業企画調整課の岡本由仁課長補佐は、「安価に使える技術を盛り込んだ」と、実施と積算、出来形管理の要領に共通する特徴を説明する。
各要領などの作成に際しては、21年度に「ICT普及促進ワーキンググループ(座長:建山和由・立命館大学教授)」を計4回にわたって開催。小規模な現場に適した技術について自治体や業界団体から意見を聞き、必要な要素や留意点などをまとめた。技術面は、同省の国土技術政策総合研究所に設けた建設DX(デジタルトランスフォーメーション)実験フィールドで実証した。