政府が掲げる「成長と分配」に向けて、民間企業に賃上げを求める圧力が強まっている。国土交通省など国の機関は賃上げ企業への入札優遇措置を導入。賃上げを表明しなければ受注を逃しかねないだけに、企業側は必死だ。賃上げ包囲網を張られた各社の動向を、日経コンストラクションの独自調査で明らかにする。

特集
賃上げ包囲網
目次
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拙速な入札優遇策に業界困惑
国が総合評価落札方式の入札に導入した賃上げ企業への加点制度が波紋を呼んでいる。加点の有無が入札結果を大きく左右するだけに、多くの企業が相次いで賃上げを表明した。ただ、この制度が何年も続けば、次第に企業の体力勝負になりそうだ。
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賃上げの裏に「後れ取れない」切迫感
賃上げの加点制度が1つの契機となり、2022年春に大幅な賃上げをする建設会社が相次いだ。加点基準の賃上げ3%を目指し、定期昇給にベースアップを積み上げた企業が目立つ。ベアを実施しない企業でも、賞与や手当の引き上げによる対応を検討している。
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賃上げ表明するも実現方法は未定
大手建設コンサルタント会社の多くが賃上げを表明しているものの、その実現方法は不確かだ。定期昇給だけで3%アップは難しいので、手当や賞与などの増額とどう組み合わせるかが問題となる。2021年に大きな賃上げを実施したため、加点対象となる22年の賃上げが難しくなった会社もある。
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組合要求を上回るベアが続出
業績が回復した企業に3%の賃上げを求めるなど、政府の介入が強まった2022年の「官製春闘」。大手建設会社では、労働組合の要求額を上回るベースアップが相次いだ。政府の意向で導入された賃上げ企業への入札優遇策を、各社とも意識したようだ。
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賃上げする大手、踏み切れない中小
人材不足が深刻な地方では、若手を採用するためにも給料の引き上げが欠かせない。事業量を確保できている地場の大手では、10年連続でベースアップをする会社もある。一方で中小は、人件費の上昇などを懸念して賃上げになかなか踏み切れないのが実情だ。