比較的好調だった土木事業に暗雲が垂れ込めた。これまで日経コンストラクションの調査で土木が増収の会社は半数を超えていたが、2021年4月~22年3月に期末を迎えた決算では37%に落ち込んだ。資材価格の高騰など利益を圧迫する不安材料があり、先行きは不透明だ。ただし、将来を見据えた研究開発投資は拡大傾向が続いている。

特集
土木にも減収の暗雲
建設会社決算ランキング2022
目次
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売上高上位の企業ほど減収傾向
これまで建築と比べて堅調だった土木部門に異変が起こった。2021年度に期末を迎えた決算期では、土木で減収の会社が増収の会社の数を上回った。特に売上高の規模が比較的大きい企業で、土木の減収が目立つ。
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資材高騰の悪影響が土木にも
売り上げ規模の大きい建設会社の粗利率や利益に減少の傾向が見られる。資材や原油などの価格高騰が、建築だけでなく土木にも悪影響を及ぼしているとの声も上がる。価格転嫁に向けた発注者との交渉や、受注後の迅速な資材調達など、各社は対策を講じている。
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減収でも研究開発に積極投資
当期の業績が振るわなくても、将来に備えて研究開発費を積極的に増やす会社は多い。売り上げ規模の大きい会社ほど、研究開発を重視する傾向がみられる。特に脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)など、最近の注目分野への投資が際立つ。
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加点を期待した賃上げが6割以上
企業の人材確保策の両輪といえる賃上げと新卒採用については、ともに前向きな動きが見られる。賃上げに関しては、国が導入した入札優遇策の影響が調査結果に如実に表れた。来春の新卒採用では、6割弱の建設会社が、人数を今春よりも増やす予定だ。
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増収見通し多いのは「鋼橋上部」
建設業界の業況に暗雲が広がった2021年度は、工事分野別の見通しでも大きな変化があった。この数年、次期売上高の見通しで好調が続いたトンネル系分野が悪化。増収を見込む会社が多い分野は鋼橋上部や基礎などで、前回調査とは一変した。
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建設会社ランキング
2022年5月時点で公表されていた経営事項審査(経審)の完成工事高が、土木一式で30億円以上、舗装で30億円以上、とび・土工・コンクリートで30億円以上、鋼橋上部で20億円以上の各条件に1つでも当てはまる計579社にアンケート用紙を送付した。有効回答は197社で回答率は34.0%。