納品した工事や業務の成果が一般公開されて、誰でもいつでも見られる──。オンライン型の電子納品システムを通して、自治体で3次元点群データなどのオープン化が進む。公開によって、電子媒体の貸与や情報公開請求に伴う雑務の負担が減ったという声が受発注者双方から上がる。
土木工事や設計業務などの成果品を、オープンデータとして一般公開する自治体が増えてきた。背景にあるのは、産官学で構成される一般社団法人の社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)が運営するオンライン型の電子納品システム「My City Construction(MCC)」の普及だ。2020年度に本運用が始まった。
MCCは、CDやDVDなど電子媒体を使わずにオンラインで成果品を納品できるシステム。東京大学生産技術研究所と建設技術研究所、AIGIDが開発主体だ。MCCに登録した納品データを、そのままオープンデータとして公開できる。
オープン化のメリットは、情報公開請求の手続きや電子媒体の貸し借りを経ずに内容を閲覧できる点だ。ウェブサイトで閲覧する場合、業務や工事の名称などキーワードで検索できる他、地図からも探せる。
発注者にとっては、受注者に過去の成果品を貸与したり、災害時に被災前のデータを入手したりしたいときに効果を発揮する。
例えば、静岡県熱海市で21年7月に起こった土石流の後、すぐに災害前から公開していた熱海市内の3次元モデルと被災後の状況を比較し、土石流の要因として「盛り土」を指摘したことは記憶に新しい。あのときもオープン化していたからこそ、県の職員だけでなく地質やデータ分析などの専門家が各自でデータをダウンロードし、庁内に集まらず分析に取りかかれた。
MCCを介した納品から公開までの手順は以下の通りだ(資料1)。まず、受注者がMCCのサイト上で工事名称や工期など工事情報を登録して成果品をアップロード。その後、発注者に登録の承認を申請する。依頼を受けた発注者が内容を確認して承認すれば、納品は完了となる。
公開するデータの対象は、受注者と発注者の合意のうえで設定する。一部のみ公開という設定も可能だ。ただ、3次元の点群データや設計データは原則公開とする。