陥没事故のあった東京外かく環状道路(外環道)トンネル工事が、またもやトラブルに見舞われた。設計ミスが原因でシールド機のカッターが地中壁の鋼材部分と接触したのだ。トンネルの合流部で、複数の受発注者が関与する複雑な工事だった。
接触事故があったのは、大泉ジャンクション(JCT)側から掘進していた南行き本線トンネルの現場だ。シールド機が通る位置に地中壁を構築せねばならず、掘進範囲を鋼材から硬質ウレタン素材に置き換えていた。しかし、地中壁の詳細設計を担当したパシフィックコンサルタンツがCADの操作を誤り、ウレタン部分の中心位置を下方に約90cm、水平方向に約10cmずれた図面を作成してしまった。
地中壁の工事では、図面のずれに気づかずに正しい位置をシールド機が通過したため、シールド機の上端が鋼材部と接触した(資料1、2)。

発注者である国土交通省の共通仕様書では、受注者が「第三者照査」を実施するように明記している。同省によると、照査はパシフィックコンサルタンツの設計担当者以外の社員が実施した。しかし照査ではミスに気づけなかった。
国交省の発注の下、その誤りのある図面に従って、2016年に戸田建設が地中壁を施工。17年に東日本高速道路会社に地中壁を引き渡した(資料3)。
「工事や引き渡しの前に、地中壁に関して違和感はなかったので、設計者へ問い合わせていない」。国交省関東地方整備局東京外かく環状国道事務所の鳥畑一博計画課長は、こう話す。
大規模プロジェクトの場合、設計図面は膨大な数に達する。「受注者側の照査を経ているならば、発注者側で設計図面全てを詳細にチェックするのは限界がある」と鳥畑課長は吐露する。