全2632文字
PR

日経コンストラクションのコラム「ドボク模型」で有名な藤井基礎設計事務所の藤井俊逸社長に、砂やアクリル板、風船を使ったDIYによる簡易な模型で、外環道の陥没事故を再現してもらった。砂地盤は乾燥、不飽和、飽和の状態で性質が変化するため、工事では特に注意しなければならない。(日経コンストラクション)

藤井基礎設計事務所 社長 藤井 俊逸氏
藤井基礎設計事務所 社長 藤井 俊逸氏
(写真:日経クロステック)

 東京都調布市の住宅街を通る市道で2020年10月、地表面に大きな陥没が生じた(資料1)。その発生メカニズムについて模型で解説する前に、有識者委員会の報告書を基に、簡単に事故の概要を振り返っておく。

資料1■ 2020年10月に陥没した箇所の埋め戻し工事の様子(写真:東日本高速道路会社)
資料1■ 2020年10月に陥没した箇所の埋め戻し工事の様子(写真:東日本高速道路会社)
[画像のクリックで拡大表示]

 陥没地点の47m下にある大深度地下では、外環道の南行き本線トンネルの工事が進んでいた。陥没の1カ月ほど前に外径16.1mの泥土圧式シールド機が南から北に通過したばかりだった。陥没地点の南北2カ所でも、土かぶり5mほどの深さに約600m3と約200m3の細長い空洞を確認。いずれもシールド機が掘進したほぼ真上に当たる(資料2)。

資料2■ 陥没以外に周辺で空洞も発生
資料2■ 陥没以外に周辺で空洞も発生
陥没事故が発生した時点で、南行き本線トンネルのシールド機は現場から北に132mほど進んでいた。北行き本線トンネルのシールド機は未通過(出所:東日本高速道路会社と国土地理院の資料を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 事故後の調査では、トンネルの頂部から陥没箇所まで、地盤に煙突状の緩み領域が見つかった。地盤はN値50以上ある東久留米層だ。陥没後のボーリング調査によると、N値は3~22にとどまっていた(資料3)。

資料3■ 陥没付近のN値は50以上
資料3■ 陥没付近のN値は50以上
(出所:東日本高速道路会社の資料を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 この現場では掘削土をチャンバー内で泥土化、加圧させることで切り羽を安定させる「泥土圧式」を採用。チャンバーとは切り羽前面のカッターの後ろに設けた空間を指す。

 陥没地点では、泥土化しにくくなったチャンバー内の土砂の塑性流動性(加圧した掘削土が自由に変形、移動できる性質)を保つため、切り羽前面の地山に気泡剤と水、空気を混ぜて作った微細な気泡を、チャンバー内に気泡溶液をそれぞれ注入しながら施工した。

 振動への苦情に対応するため、シールド機は夜間休止としていた。その間にチャンバー内で土砂と気泡が分離。翌朝に起動できず、復旧作業でカッターを小刻みに回転させる寸動運転を繰り返したことなどによって、土砂を過剰に取り込み、地山に緩み領域が発生。陥没に至ったとみられている。