日経コンストラクションのコラム「ドボク模型」で有名な藤井基礎設計事務所の藤井俊逸社長に、砂やアクリル板、風船を使ったDIYによる簡易な模型で、外環道の陥没事故を再現してもらった。砂地盤は乾燥、不飽和、飽和の状態で性質が変化するため、工事では特に注意しなければならない。(日経コンストラクション)

東京都調布市の住宅街を通る市道で2020年10月、地表面に大きな陥没が生じた(資料1)。その発生メカニズムについて模型で解説する前に、有識者委員会の報告書を基に、簡単に事故の概要を振り返っておく。
陥没地点の47m下にある大深度地下では、外環道の南行き本線トンネルの工事が進んでいた。陥没の1カ月ほど前に外径16.1mの泥土圧式シールド機が南から北に通過したばかりだった。陥没地点の南北2カ所でも、土かぶり5mほどの深さに約600m3と約200m3の細長い空洞を確認。いずれもシールド機が掘進したほぼ真上に当たる(資料2)。
事故後の調査では、トンネルの頂部から陥没箇所まで、地盤に煙突状の緩み領域が見つかった。地盤はN値50以上ある東久留米層だ。陥没後のボーリング調査によると、N値は3~22にとどまっていた(資料3)。
この現場では掘削土をチャンバー内で泥土化、加圧させることで切り羽を安定させる「泥土圧式」を採用。チャンバーとは切り羽前面のカッターの後ろに設けた空間を指す。
陥没地点では、泥土化しにくくなったチャンバー内の土砂の塑性流動性(加圧した掘削土が自由に変形、移動できる性質)を保つため、切り羽前面の地山に気泡剤と水、空気を混ぜて作った微細な気泡を、チャンバー内に気泡溶液をそれぞれ注入しながら施工した。
振動への苦情に対応するため、シールド機は夜間休止としていた。その間にチャンバー内で土砂と気泡が分離。翌朝に起動できず、復旧作業でカッターを小刻みに回転させる寸動運転を繰り返したことなどによって、土砂を過剰に取り込み、地山に緩み領域が発生。陥没に至ったとみられている。