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シールド事故が増える背景には、前例踏襲主義の設計・施工やトラブル事例の共有に後ろ向きな社風といった共通する課題が見えてきた。工事件数が減り続ける中、発注者と元請けの施工者だけでなく、マシンメーカーや下請け会社などと情報を共有する体制づくりが求められている。

 シールドトンネルの設計や工事に長年従事している技術者、学識者などへ、近年のトラブル多発の要因について取材したところ、共通するキーワードが見えてきた(資料1)。

資料1■ リスクの共有がうまくいっていない
資料1■ リスクの共有がうまくいっていない
シールド工事でトラブルが続く背景と、その主な要因をまとめた(出所:取材を基に日経クロステックが作成)
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 シールド工事では、掘削する地山の状況が目に見えず、事前に取得したデータに依拠して施工を進める。地表面の陥没をはじめ、わずかなミスで住民生活に大きな影響を及ぼす事故を招く恐れがあるため、十分な施工経験が求められる。

 だからこそ、現場でのOJT(職場内訓練)でベテランから若手への技術継承が極めて重要だ。しかし、シールドの工事件数は大きく減少している。ここ10年ほどの年間工事件数は、40件前後で推移している。20年前と比べて3分の1だ(資料2)。

資料2■ ここ10年間の落ち込みが顕著
資料2■ ここ10年間の落ち込みが顕著
年間シールド工事件数の推移(出所:シールド工法技術協会の資料を基に日経クロステックが作成)
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 さらに、1つの工事でも、現場の作業に注力できる時間が減っている。

 「現場よりも、本社と支店の管理部門の力が強くなってきた。工事関係書類の提出を求められることが増え、その作業に追われている」。日本シビックコンサルタントで社長を務め、トンネル設計などの経験が長い大塚技術士事務所(東京都稲城市)の大塚考義代表は、こう指摘する。

 マシン音の異常を聞き分けたり、排出土の性状から地山の状態を把握したりすることに時間を割く余力がなくなっているのだ。