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なかい・たくや
なかい・たくや
1995年生まれ。2019年3月に日本大学生産工学部機械工学科を卒業し、同年4月に大成建設に入社。トンネル工事現場を経て20年7月に土木本部機械部メカ・ロボティクス推進室に配属、自動化施工の技術開発を担当する(写真:日経クロステック)
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 建設業界でICT(情報通信技術)活用を推進する場合、自社だけで技術を一から構築するよりも、通常はその分野の専門企業と連携して進めることが多い。建設とICTの両分野に精通した人材のニーズが高まっている。

 ICT活用の取り組みの一つとして、大手建設会社で重機の運用や改良に取り組む機電系の部署が近年、注力するのは自動化施工の技術開発だ。大成建設はその専門部署として2020年度、土木本部機械部にメカ・ロボティクス推進室を新設した。

 同室の総勢7人のうち3人が20歳代の社員だ。同室の若山真則課長は「我々は基本的にアナログ世代なので、デジタル分野への適応には限界がある」と自覚し、若手の登用を決断した。

 その若手の1人が機電技術者の中居拓哉氏(27)だ。同室への配属はまだ入社2年目だった20年7月。前年の6月にトンネル工事の現場に配属されてから、僅か1年余りでの異動だった。入社したばかりの社員に対しては異例ともいえる人事だ。

 大成建設が、若手にとって重要な現場経験が少ないままで、中居氏をメカ・ロボティクス推進室に配属したのには理由がある。学生時代に研究効率向上のためプログラミングやアプリ開発を経験した同氏を、デジタル分野のリテラシーが特に高いと評価。自動化施工に必要なICT企業とのコミュニケーションを適正にしていくうえで欠かせない人材として位置付けたのだ。

 その期待に応え、ICTの専門用語を解する中居氏は、ICT企業との打ち合わせでその意味を自社の上司に伝えるなど、“通訳”の役割を果たすようになった。

 ソフトウエアのプログラミングの知識を備える点も心強い。さすがに自動化施工に用いる高度なソフトウエアを一から作ることはないものの、プログラムのソースコードはチェックできる。

 上の世代から見ればいわばブラックボックスであるソフトウエアの中を“のぞく”スキルを持っている。上の世代の機電技術者にとっては、異能の才だ。

 自動化施工などでのICT活用は、ソフトウエアのような外注先の成果物をそのまま使うとは限らず、自社の設定作業で細かい変更を加える必要が生じる場合もある。

 「何から何まで外注するようでは、自社の技術として使いこなせない。ソフトのソースコードが読めると、変更作業をある程度はこちらでできる」(中居氏)

 そんな中居氏は、メカ・ロボティクス推進室の上司から見れば、新世代の機電技術者の旗手だ。「彼に続くICTに強い若手の人材が増えて、“中居チルドレン”と呼ばれるようになればいい」(若山課長)と期待を集める。

 一方、中居氏自身は、工事現場への勤務を1年程度しか経験せず、現場の知識を十分に学んでいないことを弱点として認識する。この点ではICT分野の知識とは逆に、メカ・ロボティクス推進室の上司や先輩たちから学び、現場経験の少なさを補っている。