建設コンサルタント会社の間でも事業承継の問題などからM&Aが活発になっている。原動力の1つは、自社単独での生き残りは難しいという将来への不安だ。人材の確保・育成を図るために、大手の傘下に入るケースが目立つ。
「オーナー会社には限界がある。この5、6年、大手建設コンサルタントの傘下に入って会社を安定させることを役員会で検討していた」
こう語るのは、宇都宮市に本社を置く従業員約180人の建設コンサルタント会社、ピーシーレールウェイコンサルタントの平野利一会長だ。同社は2022年10月、長大の持ち株会社である人・夢・技術グループ(以下、人・夢・技術)の100%子会社となった(資料1、2)。
ピーシーレールウェイコンサルタントは平野会長が1989年に設立した。「個人企業には人材が豊富に集まってこない。大手と組んで、人材や資金、経営などの面でサポートを受けながら一緒に伸びていくのが望ましいと考えた」と平野会長は話す。
ただ、大手の「支配下」に入るような形では、従業員の士気が下がる。あくまで対等な立場を維持できるよう腐心した。
同社の売り上げの約3分の2は、大手建設コンサルなどの下請け業務だ。平野会長は以前から大手建設コンサルとの関係強化を狙い、長大を含めて大手3社ほどの株を取得していた。単なる下請けではなく、株主としての立場があった方が有利ではないかとの思惑があった。
人・夢・技術が発足した21年10月以降、同社の株を買い増し、大株主の一人となった。人・夢・技術から株の大量購入について意図を尋ねられた際、同グループとの関係を深めたい旨を説明。そこから株の持ち合いの話に発展し、最終的には人・夢・技術の100%子会社になることに決まった。
平野会長は人・夢・技術について、「グループ企業に対し、フラットな関係で見てくれる紳士的な会社だ」と評する。その社風が、売却先に同社を選んだ理由の一つだという。
地方の多様な会社との「仲間づくり」を目的に設立された人・夢・技術にとっても好都合だった。
「地方創生や国土強靱化では、地域をよく知っている会社が強い。例えば、どういう避難経路を取れば被害を最小限にできるかなど肌感覚で知っている」。人・夢・技術の永冶泰司社長は、地方の会社を傘下に収める意義をこう説明する。