地中に存在した想定外の弱部、手順を守らない安易な作業、試掘や立ち会いの不履行──。建設工事の現場では、こうした様々な原因で事故が起こっている。この1年に発生あるいは詳細が判明した事故を取り上げ、再発防止策などを探った。

今年の建設事故
目次
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北海道新幹線工事でトラブル頻発、地下22mの泥土が堤防上に漏出
北海道新幹線の札幌延伸工事で、トンネル掘削中の事故が頻発している。2022年11月2日、土かぶり約20mの箇所を泥土圧シールド工法で掘進中に地上で泥土が漏出。山岳トンネルでは出水や陥没といった事故の他、岩塊に掘削を阻まれるトラブルも発生している。
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地中の電線・通信線を損傷、図面を過信して埋設物の確認怠る
2022年5月に川崎市などで発生した約7万世帯の停電は、地盤改良時の電線損傷が原因だった。同年3月には東京外かく環状道路(外環道)の工事で、地中の通信線を破損する事故が起こっている。いずれも図面上の電線や通信線の位置を過信し、試掘による確認を怠っていた。
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鉄筋の下敷きで死亡、約12tの仮固定物が清掃中に直撃
新名神高速道路の橋脚工事で約12tの鉄筋が落下し、作業員が下敷きとなって死亡した。深礎杭のフープ筋(帯筋)を、いったん上部で仮固定していたが、何らかの理由で落ちた。落下リスクのある重量物の下での作業について、安全管理の妥当性が問われている。
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河川工事でクレーン転倒、護岸脇の空洞リスクに思い及ばず
重機を河川内に降ろすため護岸脇の駐車場に据えたクレーンが、舗装面の陥没で転倒した。原因は護岸からの土砂吸い出しで生じたとみられる舗装下の空洞だ。施工者は空洞のリスクまで思いが及ばず、敷き鉄板を用意するなどの対応を怠っていた。
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大雨で道路陥没、おざなりの管路接続で土砂流出
大阪市で発生した路面の陥没事故は、真下で進めていた下水道管の更新工事が原因だった。一晩で管の交換が終わらなかったので、仮接続管でつないで埋め戻し、交通を開放。ところが、施工計画書通りに工事を実施しなかったため、大雨で仮接続管が流された。
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新東名工事で転落・転倒、連続事故で「指名停止」割り増し
2022年5月に作業員の負傷事故が立て続けに起こったのが、新東名高速道路の川西工事だ。施工者の清水建設・岩田地崎建設JVは、事故を繰り返したことで「指名停止」の割り増し措置を受けた。この現場では21年2月にも、投入ホッパーから落ちてきた土砂で作業員が死亡する事故を起こしている。
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トンネル内に作業員閉じ込め、土砂噴出を招いた「判断ミス」
大阪府守口市で掘削中のシールドトンネルに土砂が流入し、坑内に作業員が2日間閉じ込められた事故。その原因は、目先のトラブルにとらわれ、隠れた不具合に気づかなかったことによる判断ミスだった。発注者の大阪広域水道企業団が2022年9月にまとめた報告書で、事故当時の状況が明らかになった。