坑内に土砂が流入し地表面陥没
山岳トンネルもトラブルに見舞われている。北海道北斗市を通る渡島(おしま)トンネルの台場山工区では22年3月17日に出水。翌18日には坑内に土砂が流入した。土砂の流入量は推定で約350m3に及ぶ(資料5)。
流入した土砂をせき止めるため大型土のうを設置。続いて、土のうにコンクリートを吹き付けてバルクヘッド(隔壁)を構築した。掘削面との間には気泡コンクリートを充填し、さらなる土砂の流入を防いだ。
トンネル上部の国有保安林への立ち入りが可能となった5月10日に確認すると、出水箇所の真上で直径約5m、深さ約4mの陥没が生じていた(資料6)。
台場山工区は、西松建設・植木組・中山組(札幌市)・戸沼岩崎建設(北海道函館市)JVがNATM工法で掘削を進めている。同工区の延長は3500mで、仕上がり形状は幅約10m、高さ約8mだ。
鉄道・運輸機構では、「トンネルの掘削によって地山の中の複雑な帯水状況が変化し、脆弱な部分に新たな水みちが形成された」(広報・渉外課)とみる(資料7)。出水があった場所は、泥岩を主体とする地質だ。掘削面と陥没箇所を結ぶ「想定崩落影響範囲」の中に、脆弱な部分があったと推定。ここに生じた水みちの周辺土砂が湧水とともに坑内へ流れ込んだという。事故後の調査で、土砂の緩みとわずかな空隙を確認できたが、大きな空洞は見られなかった。
この工事では注入式鋼管先受け工法や注入式鋼管鏡補強などの補助工法を採用していた。しかし、いずれも止水を目的とした工法ではなかったので、出水を防げなかったという。鉄道・運輸機構は、施工に問題はなかったとしている。
今後は、前方探査や水抜きを実施し、地山の状況に応じた補助工法を実施する。台場山工区の工期は現時点で24年7月までだが、大幅な延長は避けられない見通しだ。