2022年5月に川崎市などで発生した約7万世帯の停電は、地盤改良時の電線損傷が原因だった。同年3月には東京外かく環状道路(外環道)の工事で、地中の通信線を破損する事故が起こっている。いずれも図面上の電線や通信線の位置を過信し、試掘による確認を怠っていた。
大規模停電を起こした電線の破損事故は、2022年5月13日に川崎市麻生区の市道、尻手黒川道路の路面下で起こった(資料1、2)。川崎市が発注した水道工事で、地盤改良の施工中に東京電力の送電線を薬液注入パイプで破損した。この影響で、横浜市や川崎市、東京都町田市などの約6万9000世帯が翌日の午前5時20分ごろまで停電した。
市が22年9月に公表した調査報告書によると事故当時、施工者の真成開発(川崎市)は人孔T字管の周囲にたて坑を構築するため、地盤を安定させる薬液注入工事を実施していた。東京電力から提供された図面を手掛かりに、地中の送電線の位置を想定。その位置を避けた場所に回転削孔で薬液を注入した。
22年5月13日午後10時26分、削孔時に薬液注入パイプが地中の障害物に接触したため、いったん作業を中断した。この接触で送電線を破損したのだが、現場周辺では停電が起こらなかった。そのため、施工者は異常に気づかず工事を続行。注入位置を道路の中央寄りに約20cmずらし、改めて薬液注入を実施した。
しかし、他のエリアでは停電が発生していた。東京電力の職員が翌日の午前2時に現場に到着。市職員とともに調査し、薬液注入が停電の原因になった可能性があるとして午前2時10分に工事を中止した。