新名神高速道路の橋脚工事で約12tの鉄筋が落下し、作業員が下敷きとなって死亡した。深礎杭のフープ筋(帯筋)を、いったん上部で仮固定していたが、何らかの理由で落ちた。落下リスクのある重量物の下での作業について、安全管理の妥当性が問われている。
事故は2022年7月14日、大津市大石東町にある「新名神高速道路信楽川橋東(下部工)工事」の現場で発生した。この工事は、青木あすなろ建設が約37億円で受注。18年12月~23年7月の工期で橋脚4基の建設を進めている。
発注者の西日本高速道路会社によると、事故があったのは下り線のP2橋脚の基礎部分だ(資料1)。この橋脚では、斜面に竹割り型土留めを構築して内側を掘削。直径12m、高さ15mの円柱状の深礎杭をコンクリートで造成する。事故当時は、底部から高さ9.2mまで打設が終わったところだった。
残りの高さ5.8mは、その上に建設する四角い柱との接合部に当たる。そのため、深礎杭の主筋と円形のフープ筋の他に、柱の主筋と四角いフープ筋も併せて配置する(資料2)。落下したのは柱のフープ筋だ。
この現場では、深礎杭内に設置する柱のフープ筋をいったん高い位置に仮固定し、後で本設位置に移動させる手順で作業を進めていた。
仮固定していたフープ筋は26段。そのうち25段が、作業員の上に落ちた(資料3)。フープ筋1段の重さは約470kgあり、落下物の重量は合計で約11.7tに及ぶ。
作業員は当時、打設済みの深礎杭の上面で清掃をしていた。柱のコーナー部に当たる箇所にいて、フープ筋の下敷きになった。