重機を河川内に降ろすため護岸脇の駐車場に据えたクレーンが、舗装面の陥没で転倒した。原因は護岸からの土砂吸い出しで生じたとみられる舗装下の空洞だ。施工者は空洞のリスクまで思いが及ばず、敷き鉄板を用意するなどの対応を怠っていた。
「コンクリート舗装した駐車場は経験上、短時間ならそのままクレーンを据えても大丈夫だと判断した。現場の脇に河川が流れていることに、もっと注意を払うべきだった」。柳屋建設(長野県上田市)の小河原嘉彦社長はこのように反省の弁を述べる。同社は2022年10月3日、上田市内の工事現場でクレーンを転倒させる事故を起こした(資料1、2)。
同社が進めていたのは、国道18号矢出沢川橋付近の矢出沢川を延長10mにわたって浚渫(しゅんせつ)する工事だ。契約金額は約150万円で、工期は当初、22年9月15日~10月31日だった。
現場作業開始日の10月3日、同社は川岸にある駐車場に16t吊りのクレーンを設置。ブームを15mほど伸ばし、重さ約3tのバックホーを河川内に降ろす作業に取り掛かった。
作業終了の寸前に、クレーンのアウトリガーを据えた護岸近くの箇所が陥没し、クレーンが転倒。駐車場の広告看板の他、駐車場に近接する矢出沢川の護岸を損壊させた。舗装面の陥没箇所は半径1.2m程度のほぼ半円形をしていた。
陥没箇所では地中に空洞が生じていた(資料3)。県はその原因を、「矢出沢川の増水時に、護岸の裏の土砂が吸い出されたのではないか」(上田建設事務所維持管理課の綱島秀樹課長補佐)とみる。
柳屋建設がクレーンを据える前に、駐車場に鉄板を敷くなどの対策を講じていれば陥没を免れた可能性がある。しかし、同社は舗装の耐久性を過信したのか、そうした対策を講じず、作業手順書の作成も怠っていた。