2022年5月に作業員の負傷事故が立て続けに起こったのが、新東名高速道路の川西工事だ。施工者の清水建設・岩田地崎建設JVは、事故を繰り返したことで「指名停止」の割り増し措置を受けた。この現場では21年2月にも、投入ホッパーから落ちてきた土砂で作業員が死亡する事故を起こしている。
新東名高速道路川西工事の橋脚の施工現場で2022年5月18日、作業員が1.9mの高さから落下した。頭や腰の骨を折るなど全治1カ月以上の重傷だ(資料1)。続いて5月26日には盛り土工事の現場で別の作業員が足を滑らせて転倒。耳の奥骨を折るけがをした。
発注者の中日本高速道路会社には、国や自治体の指名停止に相当する「資格登録停止」という措置がある。さらに、資格登録停止措置を受けた会社が1年たたずに再度、同措置に該当した場合、登録停止の最低期間を引き上げる「短期加重」と呼ぶ規定もある。工事関係者が死傷する事故では通常、資格登録停止の期間は2週間~4カ月だが、短期加重に該当すると1~4カ月となる。
清水建設・岩田地崎建設JVは5月18日の事故で、不適切な安全管理が原因だったとして7月5日から2カ月の停止措置を受けた。5月26日の事故は比較的軽微なので、通常ならば2週間の停止措置で済むはずだが、短期加重によって7月28日からの1カ月となった。
新東名の川西工事は清水建設JVが約250億円で受注。16年7月~23年4月の工期で施工している。施工現場は向原工区(神奈川県山北町)と塩沢工区(静岡県小山町)の2カ所に分かれる。
5月18日の事故は、向原工区にある尺里川橋の橋脚工事で起こった。コンクリートの打設面に養生マットを敷設するため、外側の足場から鉄筋の内側に入り込み、鉄筋を伝って下りようとして転落した(資料2)。
鉄筋同士の間隔は15cm。中日本高速東京支社によると、作業員に転落時の記憶がないので詳細は不明だが、恐らく鉄筋を開いて内側に入ったと思われる。足場板からコンクリート打設面までの高低差は2.7mあった。
労働安全衛生規則では、1.5mを超える高低差がある場所には階段などの昇降設備を設けるよう規定している。現場には昇降設備があったものの、事故発生時にはコンクリートの打設が終わり、次のロットを施工するため既に撤去していた。作業員は、昇降設備がなかったので、鉄筋を伝って下りようとしたらしい。