官も民も、請負や委託など従来型の事業スキームだけで進めるインフラ整備・維持管理の限界に直面している。自治体など公共機関は予算や人材が不足し、必要な運営体制が取れない。一方、建設会社は主体的に利益を生み出しづらい“請負頼み”の経営に危機感を抱く。そこで全国で注目を集めるのが、民間に運営権を付与するコンセッションだ。長期にわたって安定収益を見込める可能性があり、大手だけでなく地方中小が参入する事例も出てきた。

特集
「請負のみ」の限界
目次
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今こそ本気でコンセッション、長期的な安定収益上げる海外に続け
民間に公共施設の運営権を委ねるコンセッション(公共施設等運営権)方式。既に約12兆円が事業化されている。今では複数の建設プレーヤーが案件に参画。国は今後10年間で7兆円の事業目標を打ち出している。長期的な安定収益を生み出すコンセッションから目が離せない。
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国内初の道路運営は黒字続き、コロナ禍でも官民のリスク分担が機能
道路コンセッションとして、国内初にして唯一の事業が、運営開始から7年目を迎えた。コロナ禍の影響を受けて通行料収入が大幅に減少したものの、「プロフィット・ロスシェアリング」と呼ぶ官民のリスク分担の仕組みが機能。運営会社は黒字経営を続けている。
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水力FITでコンセッション費捻出、20年後に地元建設会社が運営を主導
鳥取県営水力発電所のコンセッション事業は、民間事業者による老朽施設の再整備工事と、その後の電力事業の運営をセットにしたものだ。計画では事業開始から20年後に、地元建設会社に運営の主導権を移す。国の固定価格買い取り制度(FIT)を活用して、20年間と長期に得られる売電収入を事業費に充てる。
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積極的な設備投資で約87億円削減、地域住民に不可欠の水分野で安定収益を見込む
浜松市における国内初の下水道コンセッション事業は、2018年の運営開始から5年目を迎え、管理費を抑えた安定的な運営を実現。民間事業者の裁量による設備投資が効果を上げた。水分野のコンセッションは安定収益を見込めるが、一部住民の反対など導入拡大に課題が残る。
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「脱請負」掲げトップダウンで知見蓄積、地方の建設会社では若き経営者がけん引
2000年前後から「脱請負」を追求してきた前田建設工業。今ではPPP事業などが収益の柱の一つにまで成長しつつある。それに続くように地方建設会社でも、若手リーダーがけん引して、脱請負の取り組みを加速させる動きが出てきた。