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[2023年の動き]所定の賃上げを達成できなかった企業が減点を受ける。継続的に賃上げを実施する余力がない企業は、減点による失注を恐れて表明しなくなるケースが増えそうだ。

 国土交通省が総合評価落札方式の入札で2022年度に導入した賃上げ企業への加点制度は、23年度以降も続く見込みだ。

 加点を受けるには、従業員の賃金を前年度または前年と比較して所定以上に引き上げると表明するだけでよい。資本金1億円を超える法人税法上の「大企業」の場合、所定の割合は従業員1人当たりにおける平均給与の3%以上(資料1)。資本金1億円以下の「中小企業等」の場合、給与総額か1人当たりの平均給与のどちらかで1.5%以上を引き上げると表明すれば、入札で加点される。

資料1■ 様々な評価対象から賃上げの方法を選択
資料1■ 様々な評価対象から賃上げの方法を選択
資本金が1億円を超える「大企業」に対する賃上げの評価対象。上記の対象給与を前年(前年度)と比べて3%以上引き上げると表明すれば、総合評価落札方式の入札で加点を受けられる(出所:財務省や国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成)
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 全国建設業協会(全建)が会員企業に直轄工事で賃上げを表明したかどうかを22年7~8月に尋ねたところ、表明した企業は50.5%、表明する予定の企業は18.6%だった(資料2)。賃上げの対象は78.6%が給与総額、21.4%が1人当たりの平均給与となった。大部分が定期昇給やベースアップで対応する方針だ。

資料2■ 半数以上の会社が賃上げを表明済み
資料2■ 半数以上の会社が賃上げを表明済み
全国建設業協会は会員企業に、直轄工事で賃上げを表明したかどうかを尋ね、回答割合を示した。「表明した」「表明する予定」と回答した企業には、賃上げの対象も尋ねた(出所:全国建設業協会の資料を基に日経クロステックが作成)
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 全建は会員企業の直近1年間の利益も調査した。前年度と比べて「悪くなってきた」「悪い」と回答したのは4割弱だった。資材価格の高騰など厳しい状況のなかで、加点制度への対応が迫られている。