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[2023年の動き]市区町村単独での維持管理に限界が生じている現状を踏まえ、国は複数・広域・多分野のインフラを「群」として捉える維持管理を目指す。群の中でインフラ機能の統廃合を検討する。

 将来的に老朽インフラの急増で自治体の維持管理がままならなくなる──。そうした危機感から、国土交通省が予防保全型のメンテナンスサイクル構築に向けた議論を始めたのは2012年のことだ。その年の12月、笹子トンネル天井板崩落事故が発生し、議論は加速した。

 それから10年。社会資本整備審議会と交通政策審議会の技術部会に設けた社会資本メンテナンス戦略小委員会が22年12月2日、提言を斉藤鉄夫国土交通相に手交した。自治体単独の対応に限界が生じている現状を踏まえ、インフラの維持管理体制を抜本的に見直すよう求めたものだ。

 提言の軸に据えたのは「地域インフラ群再生戦略マネジメント」と名付けた維持管理の在り方だ。複数・広域・多分野のインフラを「群」として捉え、その中で必要なインフラ機能を再検討していく(資料1)。

資料1■ 近隣自治体で包括的に管理
資料1■ 近隣自治体で包括的に管理
「地域インフラ群再生戦略マネジメント」の計画策定プロセスのイメージ(出所:国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成)
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 インフラ機能の統廃合には住民の合意形成が必要だ。地理的条件や産業構造が異なる自治体同士の連携も簡単ではない。今後の維持管理についての検討を後押しするため、市区町村だけでなく国や都道府県が協力して会議を設ける案も提示した。

 実施プロセスでは、維持管理や補修、更新などの技術的な難易度に応じて包括的民間委託などの手法を導入する。軽微な補修や日常的な維持管理は自治体単独で包括して地元事業者のJVに委託。それよりも高度な補修などは自治体間をまたいで包括するイメージだ(資料2)。

資料2■ 技術力や資本力に応じて維持管理の手法を変更
資料2■ 技術力や資本力に応じて維持管理の手法を変更
「地域インフラ群再生戦略マネジメント」の実施プロセスのイメージ(出所:国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成)
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 提言では「群」マネジメントへの転換に向けて速やかに実行すべき施策も掲げた。「市区町村の体制構築」「新技術の活用推進」「デジタル国土管理の実現」「国民参加・パートナーシップへの進展」といった項目が並ぶ(資料3)。

資料3■ 包括的民間委託や新技術で「群」管理を推進
資料3■ 包括的民間委託や新技術で「群」管理を推進
提言で掲げられた今後速やかに取り組むべき施策(出所:国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成)
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 21年3月には自治体に向けた新技術導入の手引を公表。市区町村の体制構築に含む包括的民間委託の手引も22年度中に示す予定だ。