[2023年の動き]集水升や歩車道境界ブロックといった小規模だけでなく、大規模な土木構造物への適用が検討されている。農業土木でも活用が見込まれており、実構造物への採用実績は2022年よりも増える。
2022年は建設業界において、建設3Dプリンターのキーワードが根付く年となった。
スタートアップ企業のPolyuse(ポリウス、東京・港)と入交建設(高知市)が22年2月、国土交通省土佐国道事務所の道路改良工事において、3Dプリンターで印刷造形した集水升を本設構造物として設置。それを皮切りに、建設3Dプリンターの造形事例が各地で報告されている(資料1)。全都道府県で施工実績が上がる日はそう遠くない。
ポリウスによると、22年度の年間目標工事数は30件程度。12月時点で協議に入っている案件も含めると、既に目標を上回っている。「23年度は前年度目標値の3倍以上の数をこなしていきたい」。ポリウスの大岡航代表取締役COO(最高執行責任者)はこう明かす。
土木構造物では歩車道境界ブロックや集水升をはじめ、法面ブロック、重力式擁壁など、採用される種類が増えてきた。生産性向上の成果も実証されている。いよいよ、大規模構造物の造形を視野に入れる段階だ。
大規模構造物の一部として既に採用されているのが、埋設型枠だ。大手を中心に事例が増えている。例えば、清水建設は門形の建設3Dプリンター「Shimz Robo-Printer」を開発。可動範囲が広いため、前もって組み立てた鉄筋の周りに、型枠を容易に組み立てられる(資料2)。
現在、型枠は非構造体と見なし、設計上は耐力を見込んでいない。ただし、ポリウスの大岡COOはこう明かす。「23年は3Dプリンターで造形した埋設型枠と打設した生コンの付着一体性を証明して、一体の構造物とする試行工事を、橋台のフーチングで検討している」