[2023年の動き]2025年4月に大阪・関西万博が開幕する夢洲(ゆめしま)で、高架橋や道路、鉄道、上下水道といったインフラの整備工事が23年に山場を迎える。関係者は軟弱地盤対策や建設汚泥の再利用などに取り組む。
2023年は2年後に迫る「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」の開幕に向けて、会場となる大阪市内の人工島の夢洲(ゆめしま)で工事が山場を迎える(資料1)。閉幕後の街づくりまで視野に入れて整備するインフラは膨大な数に上る(資料2)。市が中心となって整備する。
市は22年2月、夢洲で進めるインフラ整備の事業費を公表した。総額は1929億円。内訳ではIR(統合型リゾート)用地の土地改良が最も高額の788億円で、次いで多いのが鉄道の駅舎やシールドトンネルといったインフラ部の346億円だ。その他、下水道の115億円、高架橋の98億円、万博会場の埋め立て・盛り土の89億円と続く。23年は数多くの工事が本格化する(資料3)。
事業費の増額幅が当初と比べて大きいのが、地下鉄である北港テクノポート線南ルートの未整備区間だ。同ルートは延長3.2kmで大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)中央線のコスモスクエア駅と夢洲駅を結ぶ。未整備区間の延長は0.9kmで、夢洲の地下に位置し、大部分をシールドトンネルが占める。施工者は大林組・熊谷組・東急建設・東洋建設JVだ。
当初250億円だった事業費が38%ほど増えた。市の担当部署である大阪港湾局計画整備部計画課は22年1月、市建設事業評価有識者会議で増額の理由を7項目にわたって挙げた。うち3項目は以前から課題だと指摘されている人工島の軟弱地盤が関係している。
例えば、夢洲駅本体工事の現場では、土留め壁を不透水層まで確実に届かせるため根入れの長さを7m延長し、結果として15億円の増額を要した。シールド機の掘進現場では想定以上の地盤沈下のため、撤去すべき地中障害物が新たに生じて、17億円の増額が必要になった。その他、整備済みのトンネル内に地盤沈下のため生じた段差の解消で、新たに5億円の工事費が発生した。
大林組JVは、新たに整備するシールドトンネルが地盤沈下に追従できるよう、セグメントの継ぎ手部に弾性ワッシャーを使用。また、夢洲の地中にある排水材のプラスチックボードドレーン(PBD)がトンネル上部の地盤を緩めないように、シールド機のカッターヘッドにPBD用の押し出し式切断装置を装備した。
他方で、万博のテーマの一つであるSDGs(持続可能な開発目標)に即した工事の工夫もある。市は、トンネルの掘削で生じる汚泥の処分量を減らすため、廃棄物処理法に基づく手続きで、大林組JVが盛り土工事に使えるように取り計らっている。