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[2023年の動き]東京―名古屋間で難題への対応が正念場を迎える。南アルプストンネル静岡工区では静岡県との合意形成に向けた議論が続く。大深度地下トンネルでは過去のトラブルを乗り越え本格掘進を目指す。
東京―名古屋間の2027年の開業を目指していたリニア中央新幹線だったが、暗雲が垂れ込めている。23年に見通しが明らかになるかは不透明だ。静岡県内に山岳トンネルを掘る南アルプストンネル静岡工区では県から着工許可が下りず、いまだ作業基地や斜坑の整備が進んでいない(資料1)。
争点はトンネルの掘削工事による大井川への影響だ。県とJR東海が10年代から話し合いを続けてきたが折り合わず、国土交通省は20年に専門家を交えた有識者会議を設けた。21年には大井川の中下流域における河川や地下水の流量についての分析結果を中間報告としてまとめた。22年6月からは、トンネル工事が上流域の生態系へ及ぼす影響と対策を中心に議論を続けている。
22年7月には沿線自治体から成る「建設促進期成同盟会」に県が加盟するなど、事業の前進に向けて議論が進む期待もあった。
だが、県が別途設ける有識者会議や大井川流域自治体の首長の間では22年12月になっても、水資源を保全するための工事の進め方や中間報告の内容について話し合いを続けている。県外に流出する水の量の捉え方や、本坑や先進坑の掘削に先駆けて実施する水平ボーリング調査が地下水に及ぼす影響について議論が決着していない。