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[2023年の動き]宇宙開発事業に、建設業界が積極的に参入していく。国土交通省は月面での無人化施工などの実現を目指し、建設会社や研究機関が進める研究を支援する。

 米国が主導し、日本も参加する「アルテミス計画」の第1弾として打ち上げた無人の宇宙船が2022年12月11日(日本時間12日)、月を周回する試験飛行を終えて地球に帰還した。25年以降に有人での月面着陸を目指している。壮大な夢物語だった宇宙開発が現実味を帯びてきた。

 日本でも宇宙に焦点を当てた事業がいよいよ本格化しそうだ。建設会社などが進める宇宙開発事業を国が支援する動きが見られる。

 国土交通省は、「月面等での建設活動に資する無人建設革新技術開発推進プロジェクト」を21年7月に開始した(資料1)。アルテミス計画などを通じて月面環境に関するノウハウを持つ文部科学省と連携する。25年は月面での無人化施工技術などの実証・実用化、30年は月面での拠点建設、35年は有人での常時滞在を目標に掲げる。

資料1■ 2025年度までに無人化施工技術などを実用化
資料1■ 2025年度までに無人化施工技術などを実用化
月面での無人化施工技術などの実現に向けたプロジェクトのフロー(出所:国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成)
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 プロジェクトで扱うテーマは大きく分けて、月面で建設を担う建設機械などの自動化や遠隔操縦、月面で使う建材の製造、月面での拠点となる施設の簡易化の3つだ(資料2)。これらの技術は、地上の建設現場への活用も検討されている。

資料2■ 3テーマで技術開発提案を公募
資料2■ 3テーマで技術開発提案を公募
「月面等での建設活動に資する無人建設革新技術開発推進プロジェクト」で取り扱う3テーマのイメージ(出所:取材を基に日経クロステックが作成)
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 重力や大気など条件が異なる月面と地上とで技術を転用することは簡単ではない。ただ、宇宙開発が本格化する前から、地上では無人化施工技術を発展させてきた。特に自然災害が頻発する日本では、危険性が高い復旧現場などで離れて作業できる遠隔操縦技術が求められ続けていたためだ。

 自動化も、建機のオペレーターの減少や高齢化といった人材不足問題の解決につながる。国交省はこのように、月面と地上の両方で効果が見込めるような技術の開発を目指す。