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土地が持つ地盤・地質リスクを知らないがために、工事でトラブルを引き起こす、または災害などで被災するケースが多発している。土地の成り立ちや地形・地質にまつわる知識は建設のプロ、素人を問わず、教養として身につけなければならない。今号から始まるコラムでは実際に起こったトラブル事例を基に、危険な土地・地盤の見抜き方について伝授する。(日経コンストラクション)

 災害の予防となる社会システムの一つである土砂災害に関わる法令に、砂防法、地すべり等防止法、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律がある。いわゆる「土砂三法」として1897年から1969年にかけて制定された。

 これらは、土砂災害が起こりそうな危険箇所を指定して、ハード対策を実施することを目的としていた。しかし、防災・減災対応としてハード対策からソフト対策に移行する考え方から、99年広島豪雨をきっかけに2000年に制定されたのが土砂災害防止法だ。

 この土砂災害防止法では、急傾斜地(崖の高さが5m以上かつ傾斜30度以上の斜面)や渓流、地滑り地の危険な箇所をある一定の地形・地質・対策施設条件で抽出し、レッドゾーン(土砂災害特別警戒地域)とイエローゾーン(土砂災害警戒地域)を設けている。

 目的は土地利用の制限や住民の避難誘導だ。ただし最近ではいろいろな自然災害のハザードマップが普及するにつれて、レッドゾーンやイエローゾーンは土砂災害のハザードマップとして積極的に利用されるようになっている。

 さて、今回はそのレッドゾーン・イエローゾーンの指定された斜面に大雨が降り、実際に崩壊した事例を題材に取り上げる(資料1)。指定された範囲が危険であることは言うまでもないが、それ以外でどこが危ないだろうか。考えてみてほしい。

資料1■ レッドゾーン・イエローゾーンの指定された斜面がある地域(出所:国土地理院の電子地形図25000分の1を稲垣秀輝が加工・追記して作成)
資料1■ レッドゾーン・イエローゾーンの指定された斜面がある地域(出所:国土地理院の電子地形図25000分の1を稲垣秀輝が加工・追記して作成)
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