会計検査院が2022年11月に公表した検査報告で、今回も土木関係の設計ミスが数多く指摘された。いずれも発注者や設計者、施工者が、もう少し気を付けていれば防げた例ばかりだ。ガードレールの支柱や根固め工など近年、毎回のように指摘されるミスもある。8件の設計ミスの内容を詳報する。

繰り返す設計ミス
会計検査報告
目次
-
設備取り付け部材が無駄に、セグメントの管理値定めず位置ずれ
羽田空港内のシールドトンネル工事で、セグメントに埋め込んだ設備取り付け部材が一部無駄になった。セグメントの回転に関する管理値を定めずに施工し、位置のずれが許容範囲を超えてしまったからだ。その背景には、トンネル本体と設備でそれぞれ工事の発注担当部署が異なるこの現場特有の事情があった。
-
L2地震動で照査せず強度不足、下水施設なのに河川の基準を適用
樋門が河川管理施設であるのに対し、ポンプゲートは下水道施設──。この違いを認識せずに設計したため、耐震性不足となったのが岡山県津山市のポンプゲートだ。より高い耐震性が求められるポンプゲートを、樋門の基準で設計していた。
-
道路かさ上げで斜面が不安定に、下段への影響考えず擁壁積み上げ
既存の擁壁の上に新たにL形擁壁を設置して道路をかさ上げする工事で設計ミスがあった。擁壁を2段以上積み上げる場合、上段が下段に与える影響を考慮する必要がある。この影響を検討せずに設計した結果、斜面全体が不安定になった。
-
ガードレールの支持力不足、新設した擁壁との距離に注意及ばず
熊本県が実施した路肩の復旧工事で、ガードレールの安全性に問題があると会計検査院が指摘した。支柱の支持力が足らないため、車両が衝突した際に、隣接する擁壁を破損する恐れがあった。支柱と擁壁がすぐ近くに位置しているのに、背面土質量に注意が及ばなかった。
-
鉄筋短く水路の安全性欠く、重ね合わせの重要性に誰も気付かず
2016年の熊本地震で被災した水路の復旧工事で、現場打ちコンクリートの強度が不足した。原因は、鉄筋継ぎ手の重ね合わせ長さの重要性に対する認識の欠如だ。一目で分かるほどの単純なミスだが、施工者と発注者ともに気付かなかった。
-
防雪柵基礎の安全性が不足、思い込みで断面図から基礎形状誤認
道の駅に整備した防雪柵の基礎が図面と異なり、風荷重に対する安全性が不足した。設計担当者が、過去に手掛けた防雪柵が単独基礎だったため、この工事も同様と誤認。図面と異なる工事数量総括表を作成し、それに基づいて施工してしまった。
-
根固め工の敷設幅が足らず、基準に従わず被災前と同じ設計
会計検査院から毎年のように指摘がある根固め工で、2022年11月の報告書でも複数の設計ミスが挙がった。敷設幅の不足や不適切な間詰め工、根固めブロックの重量不足といった問題だ。技術基準などを参照せず、「上流で対策をしたので大丈夫だろう」といった安易な考えで進めていた。
-
鋼製階段の基礎が沈む恐れ、地盤調査せず支持力の検討怠る
群馬県が国定公園内に設置した鋼製階段で、アンカーによる基礎の支持力が足りなかった。地盤の強度を調査せず、十分な支持力を確保できるか検討していなかった。県は「施工管理基準などがないので、やむを得ずメーカーの標準図で対応した」と説明する。