プロジェクトの進行中に設計や積算の基準が見直されると、事業費の変更を余儀なくされる。中でも大規模災害を踏まえた基準の変更は典型例だ。
国土交通省北陸地方整備局は2019年の東日本台風に伴う被害を踏まえ、長野県内を流れる千曲川の河川改修事業で目標流量を見直した。堤防の拡幅などにより、21年度の再評価で事業費が約1288億円増加した。東京湾岸道路の千葉県区間は11年に発生した東日本大震災を機に見直された地震動基準を適用したことで、背後護岸で液状化対策の費用がかさんだ。
一方、社会の変化に伴って時代にそぐわない計画が見直しを迫られるケースもある。国交省中部地方整備局が愛知県内で建設中の設楽(したら)ダムでは、毎日3時間の時間外労働を前提とした工期設定が破綻。22年度の再評価では、週休2日の実施状況に応じた補正係数の適用などと合わせて働き方改革に伴う事業費の増額が約82億円に上った(資料1)。
従来は建設機械をなるべく効率よく運用するために、休憩と準備時間を除いた1日21時間体制で堤体コンクリートを打設する計画だった。これを15時間に縮め、土曜の作業も中止した(資料2)。
23年度から猛暑日を工期に追加
国交省は23年4月1日から熱中症対策を考慮して工期を設定するよう指針を改定する。日中に暑さ指数が一定の値を超える時間を日数換算し、「猛暑日日数」と設定。雨や雪などによって作業ができない日数と合わせ、作業不能日として数える。
設楽ダムの場合、改定後の工期設定指針が定める熱中症対策を考慮した不稼働日は23年2月末時点で設けていない。そのため、指針を反映すると工期がさらに延びる恐れがある。「今後、工期短縮と併せて検討していく」(中部地整設楽ダム工事事務所)
国交省の指針改定では他にも、工期の算出時に休日数と作業不能日の数を別々に集計するルールを明記する。従来は過去の作業不能日を集計する際に、雨天日と休日が重なった日を1日として計上して工期を短めに算出する例があった。