関東大震災からちょうど100年に当たる2023年。トルコ南東部では2月に、この震災と共通点の多いマグニチュード7.8の大地震が発生した。いつ起こってもおかしくない巨大地震への対策はどこまで進んでいるのか。橋や盛り土、水道など、分野別に地震対策の現状と今後の課題を探った。

いま巨大地震が起こったら
目次
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関東大震災から100年、M8級巨大地震への備えは十分か
トルコ・シリアに甚大な被害をもたらしたM8級の巨大地震は、日本にとって人ごとではない。日本でも似たような性質を持つ地震が1923年に起こっており、再び発生する恐れがある。巨大地震に備えて、現状の地震対策の進捗や課題を把握しておくことが不可欠だ。
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道路橋の地震対策を阻む壁、検討するも白紙に戻った特殊橋
緊急輸送道路の橋では、最大級の地震で被災しても速やかに復旧できる耐震性が求められる。旧基準で建設された橋で耐震補強が進むが、全国ではまだ2割近くが必要な耐震性を満たしていない。一度は耐震補強を検討したものの、技術的な困難さなどから計画が白紙に戻った例もある。
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原形復旧の問題露呈した被災3橋、橋桁などを軽くして耐震性向上
2022年3月の福島県沖地震で、阿武隈川に架かる旧耐震基準で建設された3つの道路橋が被災した。そのうち福島県管理の2橋では、再度災害防止の観点から現行の基準を満たすよう上部工を架け替える。既存の下部工を活用する工事なので、橋桁を軽くするなどの工夫が不可欠だ。
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地震で崩れる盛り土、新法施行でも既設のリスクは拭えず
盛り土規制法による技術基準の見直しで、新設する盛り土の排水性は向上するはずだ。しかし、地下水がたまっている可能性のある既存盛り土への効果的な対策は示されていない。過剰間隙水圧に伴う滑り面の液状化で崩れる恐れのある盛り土は全国に存在する。
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歩み遅い水道施設の耐震化、国交省移管で災害対応強化に期待
水道施設のうち配水池は約6割、基幹管路や浄水施設は約4割しか必要な耐震性を満たしていない。特に管路は更新時に対応するケースが多いので、なかなか耐震化が進まないのが実情だ。一方で、水道行政の国土交通省への移管に伴い、施設整備の効率化や災害対応の強化などが期待される。
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堤防の耐震補強は後回し、「対策着手は100年先」との声も
地震で被災した河川堤防の調査で得られた知見を基に、直轄河川で耐震化が進んできた。一方、自治体が管理する河川は延長が膨大で、全ての堤防で耐震性能を確認するのは困難だ。滋賀県は、いつ起こるか分からない地震への対策よりも、洪水対策を優先する。
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津波の想定見直しに困惑、避難タワーや復興住宅も浸水か
津波の想定見直しによって、これまで実施した対策では不十分になるケースが出ている。岩手県久慈市が東日本大震災後に建設した津波避難タワーは、本来の用途で使えなくなった。土地をかさ上げした宮城県石巻市の災害公営住宅地は、新たな想定で浸水エリアに入った。