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「Electric & Hybrid Aerospace Technology Symposium 2018」に登壇したSiemensのAnton氏
「Electric & Hybrid Aerospace Technology Symposium 2018」に登壇したSiemensのAnton氏
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 墜落事故を乗り越えて前に進む。2018年11月8~9日にドイツ・ケルンで開催された電動航空機のイベント「Electric & Hybrid Aerospace Technology Symposium 2018」では、ドイツSiemens(シーメンス) Corporate Technology, executive vice president eAircraftのFrank Anton氏が登壇し、航空機向け電動化技術の研究開発状況について講演した。この中で、2018年5月31日にハンガリーで発生した、同社のモーターやインバーターを搭載した実証機による墜落事故に言及。死亡したパイロットと同乗した技術アドバイザーに哀悼の意を示すとともに、原因究明に全力を挙げつつ、今後も電動化技術の研究開発を継続する姿勢を見せた。「日本企業であれば、死亡事故が起きた段階でストップさせる」(ある日本人参加者)だけに、Siemensの強い意志を感じる。

Airbusと電動推進系で協業

 電動航空機に向けた推進系を新たな事業の柱に据えようと、Siemensが推し進めているのがフランスAirbus(エアバス)グループとの共同開発である。講演でも、Airbusとの「蜜月」ぶりを強調していた。

 例えば2016年4月には、ハイブリッド型電動推進系に関して、長期にわたる共同研究開発にAirbusと合意。その目玉の1つが、英Rolls-Royce Holdings(ロールス・ロイス ホールディングス)も参加して3者で研究開発を進める「E-Fan X」プロジェクトである。E-Fan Xでは、100人前後が搭乗できる既存のリージョナル機「BAe 146」を基に、4基のターボファンエンジンのうち、1基を出力2MWのモーターに置き換える。モーターはSiemens製。モーターで回すファン部分は、AirbusとRolls-Royceが担当する。

 このほか、AirbusのグループのフランスAirbus Helicoptersが中心となり、研究開発を進めている電動の垂直離発着(VTOL)機「CityAirbus」のモーターとインバーター、そして「EPDC(Electric Power Distribution Center)」と呼ぶ、電動推進系における電力のやり取りを制御するユニットをSiemensが手掛けている(図1)。

図1 小型の電動VTOL機「CityAirbus」でAirbusとタッグ
図1 小型の電動VTOL機「CityAirbus」でAirbusとタッグ
CityAirbusにおけるSiemensの担当部分をスライドで見せた。
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 CityAirbusは4人乗りで、クアッドコプター型のドローンを大きくしたような形状(フォームファクター)をしている。上下に配置した回転翼(ローター)を1組とし、それを4組、計8つのローターを備える。1つのモーターで1つのローターを回転させる。モーターも上下に配置し、それを1組として、さらにその上下をローターで挟む構造を取る。モーター1つに対してインバーター1つを要するので、ローターとモーター、インバーターの数はいずれも8つになる。

 CityAirbusのモーターは、最大連続出力が204kWの「SP200D」である。回転数を1300rpmと低く抑えて、トルクを1500N・mと高めている。重さは49kgで、重さ当たりの出力密度は4.13kW/kg、トルク密度は30N・m/kg。このうち、特にトルク密度が大きいという。油冷式である(図2)。

図2 CityAirbusのモーター「SP200D」の概要
図2 CityAirbusのモーター「SP200D」の概要
回転数を1300rpmと低く抑え、トルクを1500N・mと高めている。重さは49kgで、重さ当たりの出力密度は4.13kW/kg、トルク密度は30N・m/kg。このトルク密度は特に大きいという。
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 インバーターの出力密度の向上にも余念がない。例えば、サブ100kW、すなわち100kW未満のモーターを駆動するインバーター「SD130-A」では、出力は130kVAで、重さは9.8kgだった。重さ当たりの出力密度に換算すると、約13kVA/kgとなる。その後、さらに高密度化した「SD104-X」を試作。出力は104kVAとやや小さいながら、重さは0.9kgと大幅に軽くした。講演では、スライドに出力密度は記載されていなかったが、単純計算で約115.6kVA/kgとなる。SD130-A に比べて、約8.9倍の出力密度である。2018年4月に、SD104-Xを利用したフライトに成功したという。