新しい全固体電池の技術が登場してきた。安価で大容量の全固体電池が、これまでの実用化シナリオを大きく前倒しして実現する可能性が出てきた。
開発したのは、ベルギーの研究機関であるimec。電解質材料の開発にはパナソニックも参加した。imecは2019年6月に、体積エネルギー密度が425Wh/Lと高い固体電解質のLiイオン2次電池(LIB)を開発したと発表した(図1)。正極活物質にはLiリン酸鉄(LiFePO4:LFP)、負極活物質には金属Liを用いたとする。
400Wh/L超は液体電解質のLIB製品としては標準的な値で、実験室では700Wh/Lという例もある。ただ、imecは、今回の技術は伸びしろが大きく、約5年後の2024年には1000Wh/L、しかも充電レートを2~3C(20~30分充電)にできるとする。「現在の液体電解質のLIBはブレークスルーがない限り800Wh/Lが限界」(imec)だが、全固体電池ではそれを近い将来超えるという。
最初は液体で最後に固体化
imecのこの電池の最大の特徴はその製造プロセスにある(図2)。まずは、正極の形成。これは既存の液体電解質のLIBと同じだ。
次に、液体電解質を正極材料にしみ込ませる。これも従来と同じだ。
異なるのは、これを乾燥させて電解質を固体化してから負極などを形成する点。この結果として、量産時に既存の液体電解質のLIB向け製造装置を多少変更するだけで利用でき、全固体電池だからといって高額な投資は必要なくなるとする。実際、imecは全固体電池で課題になる大型電池の量産に向けた技術も現時点でほぼ確立しており、寸法がA4サイズ、容量が5Ahのセルの試作を2019年中に始める予定だ。
電解質が当初液体で電極のすみずみに浸透するため、全固体電池に付きまとう課題の「電極と固体電解質の接触面積が小さく、界面抵抗が非常に高くなる」現象も起こりにくい。しかも電解質は固体化後も弾力があり、充放電に伴う電極中の活物質の膨張収縮を吸収できるとする。