パワーエレクトロニクス製品などを開発しているダイヤモンド電機は、電解コンデンサーを全く使わない電源回路技術を開発した(図1)。
EV(電気自動車)用充電器や蓄電システム、太陽光発電システム用パワーコンディショナー(パワコン)、インバーター式エアコン、LED照明器具への搭載を見込む。電解コンデンサーは、大容量品の価格が安いものの、特に高温下での寿命が短く、機器の寿命や故障頻度を決める主因となっている。
平滑用コンデンサーをなくす
同社は、DC-DCコンバーターの前段などに置く電圧平滑用コンデンサーをなくした(図2)。代わりに、交流の変動を打ち消す電圧を供給する補償回路を採用し、この回路内で必要なコンデンサーの容量を大幅に減らした上で積層セラミックコンデンサー(MLCC)を使った。既存の平滑用コンデンサーは、初めに交流の脈動を吸収してDC-DCコンバーターでの平滑の負荷を減らす。今回の技術では、補償回路で平滑をすべて担う。平滑しきれない電圧変動は補償回路内に少し現れるため、これを積層セラミックコンデンサーで吸収する。
既存の回路で交流100Vなどを直流に変換するには、一般に耐圧450V以上といった高耐圧で大容量の仕様が求められる。安価な上、高耐圧で体積当たりの静電容量が大きな製品が豊富なAl(アルミニウム)電解コンデンサーが採用される。機器によっては、高さ10mm超の電解コンデンサーを10~20個搭載している(図2)。これをそのまま積層セラミックコンデンサーに置き換えると、2倍近くの体積が必要になって、現実的ではなかったという。コストもかさむ。
今回の補償回路に必要なコンデンサーの容量は、開発品の場合に既存の平滑用コンデンサーの約14%(合計50µF)とわずかだ。積層セラミックコンデンサーへの代替で増える体積やコストは抑えられる。