米ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)は2019年6月18日、東京都内で開いた車載センサーの記者説明会で、1200万画素の車載CMOSイメージセンサー「AR1212」の開発品を展示した(横の写真)。自動運転車の前方、および周辺カメラへの採用を目指す。
センサーのサイズは1.3インチと大きい。画素サイズも4.2µmと、同社の800万画素の車載CMOSイメージセンサー「AR0820」の2倍と大きい。このため、感度やダイナミックレンジを大幅に改善できる。「クルマの前方や周囲をリアルタイムに撮影しながら、高精細地図(HDマップ)との整合を取る用途など、自動運転車への搭載を狙っている」(同社)という。
ON Semiconductorは車載CMOSセンサーで62%、ADAS(先進運転支援システム)用のCMOSセンサーでは81%のシェアを持つという。ただ、最近はソニーが追い上げており、800万画素のAR0820はソニー対抗を強く意識した内容だった。今回は開発中の1200万画素品を展示し、技術の先進性を強調した格好だ。
会見では車載センサーでソニーとどう差別化するのか、といった質問も出た。これに対し、同社はCMOSセンサーだけでなく、超音波センサーやミリ波レーダー用の送受信IC、3次元レーザースキャナー(LiDAR)向けの受光素子など、幅広い製品群を手がけていることが強みだと説明した。「ADASや自動運転では、1種類のセンサーで対応することが難しく、複数のセンサーを組み合わせた“センサーフュージョン"が欠かせない。この分野で強みを発揮できる」(同社Vice PresidentのRoss Jatou氏)という。
LiDAR向けのSPADアレイ
同社は1200万画素のCMOSセンサー以外に3件の発表を行った。第1に、3次元レーザースキャナー(LiDAR)用の受光素子であるSPAD(Single-Photon Avalanche Diode)アレイ「Pandion」を発表した(図1)。2019年後半からサンプル出荷する。同アレイは400×100画素で、距離画像のほか、電子数カウントに応じた輝度画像も出力できる。2018年5月に買収を発表したアイルランドSensL Technologies(センスエル・テクノロジーズ)の技術が基になっている。
可動部のないソリッドステートLiDARへの採用を狙う。例えば、3mほどの短距離に対応したフラッシュLiDARの受光素子として使える。100mほどの長距離用として使うことも可能で、その場合はMEMSミラーなどでレーザー光をスキャンさせる必要がある。面発光レーザー(VCSEL)アレイを使う方式も期待されているが、まだ実用化には時間がかかりそうだという。
また、長距離用のLiDARでは、より高感度なSiPM(Silicon Photomultiplier)の方が有利とする。同社はSiPMも多数手がけている(図2)。ただ、SiPMは最大でも2列程度のライン状であり、2次元のアレイ状になっていないことから、可動部を減らすのは難しいという。